スープはいのち | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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先日、ある展覧会を観てからというもの、

あの曲が頭から離れず、軽く困っています(笑)。

 

 

 

その展覧会とは、21_21 DESIGN SIGHTで、

現在開催中の“スープはいのち”なる企画展。

世界中で食される料理「スープ」を切り口にした展覧会です。

 

21_21 DESIGN SIGHT企画展「スープはいのち」ポスター

 

 

本展のディレクターを務めるのは、デザイナーの遠山夏未さん。

「スープ」で“遠山”さんと聞くと、

「Soup Stock Tokyo」を開業した遠山正道さんが思い浮かびましたが、

たまたま同じ苗字というだけで、本展と「Soup Stock Tokyo」は何の関係もありません。

遠山さんは、2003年にロシアや東欧を旅したそうで、

その際の唯一の温かな食事であった「スープ」に支えられたのだそうです。

さらにその旅のさなかに出逢ったというのが、こちらの写真。

 

ルーマニア農民のスープを食べる古い写真

 

 

1900年に撮影された古い写真で、

スープを口に運ぶルーマニアの農民たちが映し出されています。

生きることを分かち合う。

そういった確かな気配をスープに感じたのだそうです。

 

さて、本展の冒頭を飾るのは、巨大な盛り塩(?)。

 

image

 

 

約40億年前。

宇宙から電磁波や放射線、隕石が降り注くことで、

さまざまな元素成分が海に溶け込んでいたそうです。

生命が誕生するきっかけとなったその海水の状態は、俗に「原始スープ」と呼ばれています。

諸説あるそうですが、「原始スープ」の塩分濃度が0.9%になったあたりで、

我々の祖先を含む生物の一部が、海から陸へと生活環境を変えたそうです。

この盛り塩がある空間を、もし水で満たした場合、その濃度がちょうど0.9%になるのだとか。

なるほど。「原始スープ」を作るのに必要な量の塩が積まれていたのですね。

 

続いて展開されていたのは、遠山さんらによるインスタレーション。

蚕が繭を作る時に最初に吐き出す最も無垢な糸「猪糸」で構成された《はじまりのスープ》です。

 

はじまりのスープ 展覧会インスタレーション
糸が張られたインスタレーション

 

 

タイトルのいう《はじまりのスープ》とは、

子宮内で胎児を包み込み育み「羊水」のこと。

そうわかった上で観てみると、束ねられた猪糸は、どこかへその緒を想起させます。

なお、まるで緒糸を優しく包み込むような液体は、羊水と同じ塩分濃度を再現したものです。

実は、その濃度はなんと「原始スープ」と同じ0.9%。

人が誕生するためのスープ=羊水と、原始スープの塩分濃度が一致しているとは!

生命の神秘を感じずにはいられませんでした。

 

 

さてさて、21_21 DESIGN SIGHTのもっとも広い展示室で、

何よりも目を惹くのが、和紙と土を混ぜ込んだ「土紙」製の大屋根です。

 

21_21 DESIGN SIGHTで「スープはいのち」展、インスタレーション展示

 

 

屋根の下には、食卓のようなものがあり、
その上では、本展の参加作家たちによる、
世界各国のスープにまつわるエピソードが紹介されていました。
 

カリフォルニアのレストランでスープを作る料理人たち

家族のスープ、 Ausstellung、リトアニアの農民

 

 

スープそのものも多種多様ですが。

 

世界各国のスープ紹介展示
マンドゥクク、クマラスープ、エマダシ、マルガートバーミア

 

 

スープに関するエピソードは、さらに多種多様。

こんなにも人生観が投影されるものなのかと、興味深かったです。

『ボクらの時代』が最終回を迎えてしまった今、

著名人に思い出のスープについて話してもらう、

新たなトーク番組が始まらないかとひそかに期待しています。

 

なお、展覧会では他にも、

離乳食や入院食として重宝される「重湯」をテーマにした映像インスタレーションや、

 

重湯の映像インスタレーション

 

 

一本の糸から編まれた薄い皮膜のような無縫製のニットで、

ベッドや椅子を包み、スープのように溶け合わせたというインスタレーションなど、

 

《はじまりのスープ》インスタレーション 猪糸と羊水

 

 

スープをテーマにした作品がいくつも紹介されていましたが、

個人的にもっとも印象に残っているのは、嗅覚のアーティスト・和泉侃さんによる作品。

その名も、《香りの記憶装置》です。

 

展示室の照明と立方体展示

 

 

本作は、香料を練り固めるお香「印香」の手法を応用したもの。

原始の海や土器、羊水など5つの香りを、

コンソメキューブの形に封じ込めたそうです。

 

コンソメキューブ型香りの記憶装置

 

 

これらの香りは実際に嗅ぐことが可能となっています。

どれもなんだか美味しそうな匂いがしました。

と思ったら、すべての香りのベースには昆布だしが練り込まれているのだとか。

どうりでいい匂いなわけです。

お湯に溶かしたら、それなりに美味しいスープになるのでしょう。

星

 

 

 
 

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