日本唯一、いや、世界でも唯一となる、
キース・ヘリングのコレクションを展示する美術館。
それが、山梨県小淵沢にある中村キース・へリング美術館です。
一昨年前、その中村キース・へリング美術館で、
《マウント・サイナイ病院のための壁画》が初公開され、
キース・へリングのファンを中心に話題となりました。
高さは1.3m、幅5mを超える超大作。
こちらはもともと、アメリカでも最大規模を誇る病院、
マウント・サイナイ病院の小児病棟に描かれた壁画です。
1989年に病院が建替えられた際に、壁から剝がされ、以後ずっと倉庫に眠っていたそう。
それから約25年の時を経て、2022年にオークションに出品されたのを
中村キース・へリング美術館の館長である中村和男氏が落札したのでした。
そして、昨年2025年。
同館には新たな収蔵品が加わり、中庭に常設されることとなりました。
それが、《無題(アーチ状の黄色いフィギュア)》。
高さ約2m、全長約5mの大型彫刻作品で、黄色い人型が、
体育の授業でお馴染みのブリッジのようなポーズをしています。
へリングは、20代後半の頃より、
所属画廊のオーナーの提案を受けたのを機に、
立体作品も手掛けるようになりました。
本作はその出発点となった作品の一つ。
当時、NYの公園などに設置されたそうで、
この上に乗ったり、穴から頭を出したりして、
子どもたちが楽しく遊んでいたようです。
さすがに、こちらはあくまで美術館の収蔵品なので、
上に乗るのはもちろん、お手触れも禁止となっていました。
どうしても遊びたい場合は、想像して頭の中でお楽しみくださいませ。
さて、現在、中村キース・へリング美術館では、
《無題(アーチ状の黄色いフィギュア)》のお披露目を兼ねて、
“Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ”が開催されています。
へリングの彫刻作品にスポットを当てるもので、
同館が所蔵する全13点の彫刻作品が一堂に会した展覧会です。
紹介されていた彫刻作品はどれも、
立体ではあるものの、平面をそのまま立ち上げたような、
時には、それをグニュっと丸めたような姿をしていました。
シンプルな線と色とで構成された絵が特徴的なへリング。
その強みを最大限に活かした彫刻作品といえましょう。
なお、紹介されていた彫刻作品の中には、このようなものも。
1990年、へリングはエイズにより、31歳という若さでこの世を去ります。
本作は、その亡くなる2週間前に完成した彼の最後の作品。
教会の祭壇画として制作された《オルターピース:キリストの生涯》です。
現在、世界各地の教会や美術館9か所に収蔵されているそうで。
日本で所蔵しているのは広島市現代美術館と、
ここ中村キース・へリング美術館の2か所だけ。
是非、お見逃しなく!
ちなみに。
彫刻作品もいいけど、やっぱりへリングらしい平面作品も観たい!
そんな皆様も、どうぞご安心くださいませ。
本展には、《マウント・サイナイ病院のための壁画》や、
彼の出世作ともいうべき「サブウェイ・ドローイング」など、
平面作品もちゃんと取り揃えられています。
その中に、昨年12月より展示が加わったものがありました。
こちらの《スリー・リトグラフス》という作品は、
館長の中村氏が初めて手にしたヘリング作品なのだそう。
NY出張の際、たまたま
この作品を目にし、一気に心を奪われてしまったそうで、
それをきっかけに、ヘリング作品のコレクションを始めることとなったのでした。
中村キース・ヘリング美術館はまず生まれてなかったはず。
同館にとってもっとも重要なコレクション品と言えましょう。
実は、中村さんは昨年12月に急逝されたそうで、
本作はその追悼展示という位置づけとなっていました。
これほど素敵な美術館を作ってくれた中村館長には、感謝しかありません。
心よりご冥福をお祈りいたします。


なお、現在、中村キース・へリング美術館では、
同館を設計した建築家・北川原温さんの個展、
“北川原温 時間と空間の星座”も同時開催中です。
北河原さんなりにへリングを解釈したものなのだとか。
解釈はまぁ、人それぞれです。














