府中市美術館では、2005年の“百花の絵”以降、
毎年春に江戸絵画を中心とする展覧会が開催されてきました。
それが、「春の江戸絵画まつり」。
20年以上にわたって、江戸絵画ファンに愛されてきた、
この人気長寿企画が、なんと今年2026年にフィナーレを迎えます!
この世に、永遠なんてないとは頭ではわかっていましたが、
なんとなく勝手に「春の江戸絵画まつり」は永遠に続くものだと思っていました。
『笑っていいとも!』の最終回を知った時以来の衝撃を受けています。はい。
そんな「春の江戸絵画まつり」の大トリを飾るのは、
これまでの「春の江戸絵画まつり」にほぼ皆勤賞で出演(?)した、
シリーズの立役者ともいうべき絵師、“長沢蘆雪”の大規模な回顧展。
東京では実に64年ぶりとなる長沢蘆雪展です。
さてさて、長沢蘆雪といえば、少し前までは、
若冲や蕭白と並ぶ「奇想の絵師」の一人として紹介され、
その“奇想ぶり”がフィーチャーされがちでした。
しかし、ここ近年は、もふもふの仔犬の絵、いわゆる“蘆雪犬”が、
フェリシモのミュージアム部によって、ぬいぐるみ化されるほどの人気に。
長沢蘆雪《菊花子犬図》 個人蔵 前期・後期展示
そこで今回の“長沢蘆雪展”では、
師の円山応挙譲りの写生の筆が冴える作品や、
その“奇想ぶり”がいかんなく発揮された作品に加えて、
蘆雪の「かわいい」作品が数多く紹介されています。
長沢蘆雪は、“江戸時代きっての「かわいいもの描き」”だった?!
彼の新たな魅力が存分に味わえる新感覚の蘆雪展となっています。
なお、そんな展覧会だけに、図録の帯には、このようなキャッチコピーが↓
おそらく、『かわいいだけじゃだめですか?』に対するアンサーですね(笑)。
ちなみに。
これまでの「春の江戸絵画まつり」と同様に、
前期と後期で出展作品がガラッと替わります。
(もちろん今回もチケットに、2度目は半額となる割引券が付いています!)
前期の見どころは何と言っても、“蘆雪犬”大集合のコーナーです。
山形県酒田市の本間美術館、
そのイメージキャラクター「くーたくん」こと《狗児図扇面》をはじめ、
長沢蘆雪《狗児図扇面》 本間美術館 前期展示
日本各地のミュージアムや個人が所蔵する“蘆雪犬”が大集結!
大げさに言ってるわけでなく、どの仔も可愛らしく。
江戸絵画の展覧会を観ているというよりも、
もはやペットショップで仔犬を見ている感覚に近いものがありました。
なお、数ある“蘆雪犬”が描かれた作品の中で、
特に目玉といえるのが、本展が初公開の機会となる《唐子遊図襖》です。
蘆雪は生涯において、かわいい仔犬だけでなく、かわいい子どもの絵も多く描きました。
《唐子遊図襖》はそのどちらもが描かれた欲張り(?)な作品です。
9面からなる横10mを超える大作ですが、
中でも見逃し厳禁なのが、こちらの部分↓
少年によって前足を掴まれた仔犬が描かれています。
どこか仔犬は抵抗しているようにも見えますね。
ワクチン接種に行きたくない、みたいな。
この仔犬に対して、府中市美術館は公式X上で、
「引きずられ犬」というパワーワードを与えていました(笑)。
なお、後期にも「引きずられ犬」は出展されますが、
“蘆雪犬”の全体の数は前期と比べるとグッと減ってしまうようです。
しかし、その代わりに後期には、蘆雪の代表作中の代表作、
和歌山県串本町の無量寺に伝わる《竜虎図襖》が出展予定!
これはもう、前期も後期もどちらも行くしかありませんね。
重要文化財 長沢蘆雪《虎図襖》 無量寺・串本応挙芦雪館 後期展示
実は、長沢蘆雪の展覧会自体は、
2023年に大阪中之島美術館で開催されたものを観ており、
正直なところ、そこまで大きな違いはないように思っていました。
もちろん大阪での蘆雪展も見ごたえはあったのですが、
展示の構成やコンセプト、キャプションのワードセンスなど、
すべてにおいて、府中市美術館が上回っていたように思います。
同じ素材でも料理人が違うと、こうも変わるのかと新鮮な驚きがありました。
「春の江戸絵画まつり」の20数年にわたるノウハウが、
今回の長沢蘆雪展にすべて凝縮されていた気がします。
最終回に相応しい感動作。



今まで本当にありがとうございました!
いつかしれっと「帰ってきた春の江戸絵画まつり」が始まることを願っています。
┃会期:2026年3月14日(土曜日)~5月10日(日曜日)
前期:3月14日(土曜日)~4月12日(日曜日)
後期:4月14日(火曜日)~5月10日(日曜日)
┃会場:府中市美術館
┃https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/2026_Rosetsu.html







