VOCA展2026 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

The Vision of Contemporary Art。略して、VOCA。

VOCA展実行委員会に依頼された美術館学芸員や、

ジャーナリスト、研究者らが、これぞという40才以下の作家をリコメンド。

その作家が平面作品の新作を出品し、その優劣を競うガチンコバトルです。

 

VOCA展2026 ポスター

 

 

ただ、平面作品とは言っても、壁面に展示できて、

250cm×400cm以内のサイズであれば、出展はOK。
絵画や版画、写真に限らず、映像作品も出展OKとなっています。
なお、ルールの中には、“厚さ20㎝以内であれば平面とみなす”といったものも。
つまり、その条件を満たしている以上、厚さ20cm以内の薄型立体作品もOKということ。
まぁ言ってしまえば、わりと何でもありな賞レースです(笑)。

 

そんなVOCA展は1997年にスタート。

過去には、村上隆さんや奈良美智さん、蜷川実花さんといった、
日本を代表する現代アーティストが、若き日にVOCA展に参加しています。
いうなれば、VOCA展は日本の美術界における若手作家の登竜門なのです。

 

さて、33回目となる今年2026年、

グランプリのVOCA賞を受賞したのは、

戸田沙也加さんによる2枚1組の作品。

《語られざる者の残響》です。

 

VOCA賞戸田沙也加作品とソー・ソウエン作品
 
 
戸田さんは、とある物故の彫刻家のアトリエを訪れた際に、
そこに大量の裸婦像が佇んでいる姿に衝撃を受けたのだそう。
その後、アトリエの取り壊しが決まります。
長年にわたって、裸婦は“美の象徴”とされてきましたが、
戸田さん的には、「アトリエのか=その終焉」と感じられたとのこと。
向かって左側は、そんな裸婦像を写真で撮影したもの、
右側は、アトリエに長年置かれていた石膏作品をモチーフにした絵画です。
ここ近年、公共空間から裸婦像が撤去されていますが、それも含め、
戸田さんの作品を通じて、今が一つの転換期であることを実感させられました。

 

続いて、VOCA奨励賞を受賞したのは、

ソー・ソウエンさんの《Pain things-ペイン ティングス》

映像と点字、絵画で構成された作品です。

 

VOCA展 戸田沙也加《語られざる者の残響》

 

 

絵画とはいっても、絵の具で描いているわけではなく。

筆に漂白剤を含ませ、黒く染めた布を漂白することで描いているのだそう。

画面中央で白く浮かび上がっているのは、自身のシルエットとのこと。

「布を痛めつけて漂白すること」は、

「一度染め上げたアイデンティティを取り除いていくこと」を暗示しているそうです。

 

奨励賞の受賞作はもう1点。

沖縄生まれの寺田健人さんによる《The Gunshot Still Echoes》です。

 

VOCA展:戸田沙也加作品「語られざる者の残響」

 

 

本作は、工場の煙突や狛犬などを撮影し、リトグラフにしたもの。

一見すると何の変哲もない光景のようですが、

実はどれも一部に戦争による銃痕が残っています。

作品では、その部分がキラキラとしています。

 

戸田沙也加《語られざる者の残響》4点

 

 

実はその正体は、米軍が使用した銃弾の薬莢。

それを細かく砕いて塗料に混ぜたもので、

まるで金継ぎのように欠け(?)を補修しているのです。

画面からは、静かな怒りや鎮魂の気持ちがひしひしと伝わってくるようでした。

 

 

佳作賞に選ばれたのも、2点。

1点目は、加藤千晶さんの《ゆらぐ輪郭、声の断片を拾う》です。

 

ソー・ソウエン《Pain things》VOCA展奨励賞受賞作品

 

 

加藤さんは、“日常のワンシーンを編み物で記録する”アーティスト。

離れて観る分には、写真のように思えますが、

実は、衣服をほどいた古糸を編んで制作されています。

その制作のコストを想像するに、ゾッとしました。

 

ソー・ソウエン《Pain things》VOCA奨励賞受賞作品

 

 

もう1点は、倉敷安耶さんの《手を添える》です。

 

戸田沙也加《語られざる者の残響》VOCA賞受賞作品

 

 

本作のモチーフとなっているのは、マグダラのマリアと小野小町。

西洋美術、日本美術でそれぞれ、

多くの作品に題材にされてきた2人です。

それも長きにわたって、男性の性的視線の対象物として。

ところで、特徴的なのは何と言っても、作品の表面。

新作とは思えないくらいにボロボロです。

 

VOCA賞戸田沙也加《語られざる者の残響》新作絵画

 

 

倉敷さんは転写という技法を積極的に用いるアーティスト。

まずは、アクリルメディウム樹脂を塗った支持体の表面に、

イメージをインクで印刷した紙を貼り付けて、乾燥させます。

定着したら、水で濡らして紙の部分をこそぎ落としながら転写。

その際に剥がれたり、擦れたりするのをあえて表現としているのです。

ボロボロの表面は、痛々しさすら覚えます。

マグダラのマリアといえば、キリストの足に香油を塗ったエピソードでお馴染みですが。
許されるながら、この絵の表面に香油的なものを塗ってケアしてあげたくなりました。
 
ちなみに。
これまでのVOCA展では、VOCA展、奨励賞、佳作とは別に、
大原美術館賞がありましたが、昨年で終了となったとのこと。
本年からますます入賞は狭き門となっているようです。
 
 
なお、惜しくも入選を逃した作家の中にも、
FACE展2023のグランプリを受賞した吉田桃子さんや、

 

VOCA賞戸田沙也加「語られざる者の残響」

 

 

第8回写真『1_WALL』」グランプリを受賞した黑田菜月さんら、

 
VOCA展:戸田沙也加《語られざる者の残響》

 

 

実績のあるアーティストが多く顔を揃えています。

 

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個人的にもっとも気になっているのは、

光岡幸一さんの《FLASH SYNDICATE》という作品。

 

2026年VOCA展の作品《Pain things》

 

 

うねうねと波打つ金属板に、

何やら日付と時刻が書かれています。

そして、その隣には、謎のチェックリストがありました。

 

VOCA展の採点表、日付と時間、項目別記録

 

 

それらに関しては一切の説明なし!

一体、誰が何の項目をチェックしているのか??

推薦したキュレーターも、何が起こるか把握していないそうです

昨年7月5日に何かが起きると話題になって、

結局のところ、それっぽいことは起こりませんでしたが。

今年の3月29日はきっと上野の森美術館で何かが起こるはず!

星

 

 

 

 

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