この春、ちひろ美術館・東京で開催されているのは、
“生誕120年『てぶくろ』の画家 ラチョフと民話絵本の世界”。
ロシアに生まれ、あのウクライナ民話絵本でも知られる画家、
エフゲーニー・ラチョフ(1906~1997)の生誕120年を記念して開催される展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ラチョフの代表作と言えば、ウクライナ民話をもとにした絵本『てぶくろ』。
とあるネズミが、雪の中に落ちていた手袋の中に暮らすことにしました。
すると、「ぼくもいれて」「わたしもいれて」と、
ウサギやキツネ、クマなどが次々にやってきます。
そのせいで、手袋はどんどんと膨らんでいく、というお話です。
ラチョフの『てぶくろ』は、発売から半世紀以上たった今なお国内外で大人気。
日本でも1965年に翻訳が出版されており、
現時点での発行部数は330万部(!)を超えているそうです。
そんな『てぶくろ』の原画の一部が、なんとちひろ美術館に所蔵されています。
エフゲーニー・ラチョフ『てぶくろ』(福音館書店)より 1950年
しかも、それらの原画の中には、エフゲーニー・ラチョフ『てぶくろ』(福音館書店)より 1950年
本編に採用されなかったラストシーンも!
この幻のラストシーンを観られるのは、
当たり前ですが、ちひろ美術館だけです。
さらに、ちひろ美術館は、『てぶくろ』の原画以外にも、
立体作品を含むラチョフの作品を数多く収蔵しています。
その総数は、実に32点。
ロシア国内以外で、これほどまとまった形で、
ラチョフの作品をコレクションしているのも、ちひろ美術館だけです。
なお、同館でラチョフの展覧会が開催されるのは、
1998年に行われた追悼展以来、約30年ぶりとのこと。
つまり、世界的にも貴重なラチョフコレクションが、
一挙展示される機会も、約30年ぶりというわけです。

ちなみに。
数あるラチョフの作品で特に印象に残っているのは、
『小さな丸パン』というロシアの民話を描いたもの。
日本では『おだんごぱん』の名で出版され、広く知られています。
エフゲーニー・ラチョフ ロシア民話「小さな丸パン」1969年
そのあらすじをざっくり説明しますと。
おばあさんがおじいさんのために焼いた丸パンが脱走しました。
その丸パンは、ウサギやオオカミ、クマと、
次々に出会うも、うまいこと逃げおおせます。
しかし、最終的にはキツネに騙されて食べられてしまうのでした。
・・・・・なんちゅうバッドエンドだ!
丸パン自身はもちろん、そもそも食べられなかったおじいさんも悲しいです。
さて、本展ではラチョフの作品だけでなく、
動物画家ラチョフに大きな影響を与えた動物画家、
エフゲーニー・チャルシーンの作品を筆頭に、
エフゲーニー・チャルーシン しまうま(左)、ロシア民話「ハエの御殿」(右) 1960年頃(推定)
東スラブの民話を描いた作品なども紹介されています。
どの作家の作品も個性的でしたが、
とりわけ個性的だったのが、マイ・ミトゥーリッチ。
17歳の時に従軍した彼は、画家で構成された前線部隊に配属されています。
その際、直属の上司だったのがラチョフでした。
ただ、ミトゥーリッチの作風は元上司のラチョフとは全然違います。
牧歌的で素朴な作風のラチョフに対し、ミトゥーリッチは都会的でスタイリッシュ。
彼の手にかかると、民話の『カラスときつね』がこのような仕上がりになります。
“ちひろ いつもとなりに―子どもと動物―”も開催されています。
ちひろの家には、野鳥が訪れることもあったようで。
鳥がやってくると、ちひろは筆を休めて、
飛び立つまでの様子を眺めていたのだそうです。
それゆえ、ちひろは鳥を描くことも多かったそう。
本展では、そんなちひろによる鳥コーナーも設けられていました。
その中で個人的にお気に入りの鳥が、こちらの《紫の小鳥》。














