先月14日、茨城県水戸市の中心エリアに、
新たなアートの拠点がグランドオープンしました。
その名も、テツ・アートプラザ。
3つの施設からなる文化施設です。
その中で、ひときわ目を惹く風格ある中心の建物は、
1909年に建設された旧川崎銀行水戸支店の建物をリノベーションしたもの。
旧川崎銀行の建物をリノベしたと言えば、千葉市美術館や佐倉市立美術館も。
アート施設にリノベされがち、それが旧川崎銀行です。
さて、旧川崎銀行水戸支店は、建物のある泉町にちなんで、
ドイツ語で「泉」を意味する「クヴェレ」からクヴェレホールという名称に。
誰もが無料で利用できるホールとなりました。
内装こそ違いますが、ホール内の雰囲気は、
千葉市美術館1階にあるさや堂ホールにそっくり。
2つのホールが兄弟(?)であることを実感させられました。
そんなクヴェレホールのお隣にあるのが、
アパレルブランド「niko and ...」が展開する「niko and ... COFFEE」。
購入した飲食物をカフェの店内で食べるも良し、クヴェレホールで食べるも良し。
2つの建物は内部で繋がっているので、自由に行き来することができます。
さて、テツ・アートプラザを構成するもう一つの施設が・・・・・
(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)
クヴェレ美術館。
「niko and ...」や「GLOBAL WORK」、「LOWRYS FARM」といったブランドを、
国内外で展開するアンドエスティHD(旧アダストリア)の福田三千男会長のコレクションと、
水戸市の実業家・吉田光男より寄贈されたコレクションを紹介する美術館です。
そんなクヴェレ美術館の開館を記念して、
これから3期にわたって開館記念展が開催されるようで。
現在は、その幕を開ける第1弾の展覧会として、
“Meet 美の交差点 近代日本画と東洋陶磁”が開催されています。
(注:前期と後期で入替あり)
まずは、2階の展示室へ。
こちらでは、「優美」「たおやかさ」をキーワードに選ばれた、
福田コレクションの近代日本画の名品の数々が中心に紹介されています。
水戸市にオープンした美術館ということで、
出展作の中には、菱田春草の《紅葉山水》や、
横山大観の大作《放鶴》といった、
茨城県にゆかりのある作家の作品が数多く含まれていました。
それらの中には、牛久出身の小川芋銭(うせん)の作品も。
彼はその生涯で多くの河童を描いたことから、“河童の芋銭”と称されています。
本展の出展作《河伯安住所》にももちろん、河童が描かれていました。
実はこちらの作品は、芋銭にとっても自信作だったようで、
昭和5年に、ローマで開催された“日本美術展覧会”に出品されています。
ということは、もしかしたら、ローマの人々が、
初めて目にした河童の絵なのかもしれません。
なお、日本画ではないですが、茨城繋がりで、
茨城県下館町(現・筑西市)の出身の陶芸家で、
陶芸家として初の文化勲章を受章した板谷波山の作品も展示されていました。
茨城の茨城による茨城のための展覧会。
とはいっても、ローカルスターではなく、
美術界のビッグネームが揃っているので、
もちろん茨城県民以外も楽しめる展覧会です。
ちなみに。
決して茨城縛りの展覧会というわけではないので、
京都を代表する“美人画の名手”上村松園の《雪》をはじめ、
竹内栖鳳や速水御舟、鏑木清方らの近代日本画も出展されていました。
それらの作品もどれも良かったのですが、
2階展示室での個人的MVPは、佐藤玄々による《鼠》。
一木から彫り出されたもので、
360度どこから見てもキュートでした。
特に可愛らしかったのが、しっぽです。
この《鼠》をクヴェレ美術館のマスコットキャラクターにすればいいのに。
そう思ったのですが、クヴェレ美術館的には、
ロンドンで活躍したというマーティン兄弟の《ふくろう》が推しである模様。
そういえば、冒頭に掲載したテツ・アートプラザのロゴも、フクロウがモチーフでしたっけ。
美術館の2階には、この《ふくろう》を常設展示するための1室が設けられていました。
さて、2階では福田コレクションが中心に紹介されていましたが、
1階の展示室では、吉田コレクションにスポットが当てられています。
シルクロードにちなむオリエント美術や日本の古陶磁を核とする吉田コレクション。
そんなコレクションのテイストに合わせて、
1階展示室はどことなく日本民藝館のような雰囲気に。
なお、これらの展示ケースや什器は、
すべて展示室に合わせて作られた特注品とのことです。
新品なのに、どことなく長年使いこまれたような感も。
スタイリッシュかつクラシカルな味わいのある展示ケースでした。
なお、吉田コレクションの中には一部、
縄文土器や須恵器といった考古物も含まれています。
その中でもっとも印象に残っているのが、縄文時代の小壺です。
縄文ではなく、謎の古代文字のような抽象的な文様が施されています。
所有者だった吉田氏は、この小壺に《星座紋小壺》と名を付けたのだそう。
なるほど。縄文人も宇宙に想いを馳せていたのかもしれませんね。
想像するだけで、ロマンです。
本展の出展作の中では、かなり小さいほうの作品ですが、
作品から感じるスケールは、どの作品よりも大きかったです。




















