あの『アナと雪の女王2』を超える興行収入135億円を突破し、
ディズニー映画『ズートピア2』が社会現象的大ヒットとなっています。
そんな中、パナソニック汐留美術館で開催されているのは、
ズートピア・・・ではなく、「ユートピア」を切り口にした展覧会。
その名も,、“美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像”です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
「ユートピア」とはもともと、16世紀の思想家トマス・モアが発表した著作のタイトル。
ギリシャ語で“どこにもない場所”を意味する造語です。
さて時は進んで、19世紀。
アーツ・アンド・クラフツ運動の主導者として知られる、
イギリスのデザイナーで思想家のウィリアム・モリスが、
『ユートピア便り』というSFチックな小説を発表します。
ウィリアム・モリス(発行:ケルムスコット・プレス)『ユートピア便り』 1892年
TOPPANホールディングス株式会社 印刷博物館蔵
小説の内容をざっくりまとめると、
19世紀に生きる主人公が22世紀にタイムスリップし、
そこで、働く喜びと芸術に溢れた理想的な暮らしを目の当たりにするというもの。
遠く海を越えて、その『ユートピア便り』の世界に、
大きな感銘と影響を受けたのが、白樺派の同人たちでした。
そして、その交流の中から発生したのが、
思想家・柳宗悦を中心とする民藝運動です。
そう、民藝運動とはただ単に、“なんかエモくね?”と、
名もなき職人が作ったものをありがたがるような運動ではなく。
当時、急速に工業化や西欧化が進む日本において、
失われつつあった「豊かな生活」を「美」を追い求める、
まさに彼らにとってのユートピアを目指した運動だったのです。
本展では、白樺派や民藝運動だけでなく、
20世紀の日本におけるさまざまな「ユートピア」が紹介されています。
それらの中には、詩人で建築家の立原道造が思い描いた芸術家コロニーや、
生活と芸術が一体となった竹久夢二の「榛名山産業美術研究所」計画、
戦後まもなく、実業家で文化活動家の井上房一郎と、
建築家レーモンド夫妻が芸術と建築で復興させた群馬県高崎、
さらには、宮沢賢治が自身の心象世界にある理想郷として創作した“イーハトーヴ”も。
美術やデザイン、工芸、民俗学など、実に多岐に渡る「ユートピア」が、
作品や貴重な資料を交えながら、オムニバス形式で紹介されています。
ちなみに。
本展の会場構成を手掛けるのは、
今注目を集める気鋭の建築コレクティブ「GROUP」です。
『ユートピア観測所』をコンセプトに構成されたそうで、
全5章がそれぞれ独立したユニークな会場となっていました。
本展で紹介されていた「ユートピア」の中で、
個人的にもっとも興味深かったのは、渋沢敬三によるアチックミューゼアムです。
彼は自宅物置の屋根裏部屋(アチック)に、小さな博物館を作り、
仲間たちと収集した民具や郷土玩具、標本などを展示していたそうです。
その後、研究や調査を進めるうちに、
興味の対象が、民具から民族へと拡大。
民家研究者の今和次郎らと協働し、日本民族学博物館を構想するようになります。
実際、1939年には保谷(現在の西東京市)に、
日本初の野外博物館となる「日本民族学会付属民族学博物館」を創設。
残念ながら、1962年に閉館してしまいますが、
そののちに膨大なコレクションは国に寄贈され、
大阪の国立民族博物館のコレクションの基盤となりました。
屋根裏部屋の小さなミュージアムからスタートして、
最終的には、国立の博物館のコレクションの礎を築くだなんて。
お恥ずかしながら本展を通じて、渋沢敬三を知りましたが、
こんなにも立身出世を遂げた(?)スゴい人がいたのですね!
・・・などと思っていたら、彼はあの渋沢栄一の実の孫とのこと。
アチックミューゼアムは、三田綱町にあったそうです。
勝手に庶民を想像していましたが、華麗なる一族の一員でした。
それと、もう一つ印象に残っているのが、池袋モンパルナス。
かつて1920年代から40年代にかけて、
池袋駅の西側、現在の豊島区長崎と千早あたりに、
多くの画家や評論家、詩人、演劇関係者などが住んでいました。
その様子を住民の一人である詩人の小熊秀雄は、
パリのモンパルナスになぞらえて、池袋モンパルナスと称したのです。
池袋モンパルナスに属する芸術家は数多くいますが、
本展で特にフィーチャーされていたのは、松本竣介です。
松本竣介《立てる像下絵》 1942年 神奈川県立近代美術館蔵
軍部による厳しい言論や表現の統制下において、
松本は、体制に迎合する「戦争記録画」を積極的に描くのではなく、
ヒューマニティの精神で都会風景や人間像を描くこうとしました。
そんな理想を掲げた彼は、戦争真っただ中の1943年に、
靉光、麻生三郎ら仲間たちとともに、「新人画会」を結成します。
あの不穏な時代に、芸術家として実に勇気ある行動を取っていたんですね。
もし、当時にX(旧Twitter)があれば、
彼は芸術家たちを励ますために、こんな投稿をしていたかも。
「後輩芸術家達は不安よな。 松本 動きます。」と。
┃会期:2026年1月15日(木)~3月22日(日)
┃会場:パナソニック汐留美術館
┃https://panasonic.co.jp/ew/museum/
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なお、〆切は2月15日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。













