LOVE いとおしい…っ! | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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山種美術館では現在、「LOVE」をテーマにした【特別展】、

“LOVE いとおしい…っ! -鏑木清方の恋もよう、奥村土牛のどうぶつ愛-が開催中です。

 

山種美術館 LOVE展 ポスター

 

 

“いとおしい”ではなく、“いとおしい…っ!”。

「…」や小さい「つ」、文末の「!」によって、

いとおしむ気持ちが何倍にも増幅していました。

展覧会タイトル・オブ・ザ・イヤーがあるなら(?)、

本展が、早くも今年の最優秀賞候補と言えましょう!

 

と、それはさておきまして。

本展では、山種美術館のコレクションだけでなく、

メインビジュアルにも採用されている鏑木清方の《薄雪》をはじめ、

「昭和のキャバレー王」の異名をとった福富太郎のコレクションからも、

特別に「LOVE」にまつわる作品が出展されています。

そのうちの1つが、“画壇の悪魔派”と称された北野恒富による《道行》

近松門左衛門の『心中天網島』を題材にした作品です。

 

北野恒富《道行》と奥村土牛《兎》

北野恒富《道行》 1913(大正2)年頃 絹本・彩色 福富太郎コレクション資料室

 

 

男女ともに、うつろな表情を浮かべているのは、

道ならぬ恋に落ちた2人が、心中を決意した場面ゆえ。

ラブはラブでもバッドエンドのラブストーリーです。

 

なお、その隣に展示されていたのは、

同じく福富太郎コレクションの池田輝方による《お夏狂乱》

 

鏑木清方《薄雪》 落ち葉と女性

池田輝方《お夏狂乱》 1914(大正3)年 絹本・彩色 福富太郎コレクション資料室

 

 

こちらもタイトルからしてフラグが経っていますが、

実際に江戸時代に起きたバッドエンドのラブストーリーが題材となっています。

描かれているのは、とある旅館の娘・お夏。

彼女は、使用人である清十郎と恋に落ちます。

しかし、その身分の違いから恋は許されず。

決意した2人は駆け落ちするものの、

清十郎は盗みの濡れ衣を着せられ、処刑されています。

それを知ったお夏は、悲しみのあまり狂乱したそうな。

 

実は、鏑木清方の《薄雪》も、悲恋を描いたもの。

福富太郎は、ハッピーエンドの恋愛モノがあまり好きではなかったのでしょうか。

 

などと思っていたら、山種コレクションの代表的な作品の一つで、

久しぶりに連作8点がすべて展示されている小林古径の代表作《清姫》も・・・・

 

北野恒富《道行》心中天網島 悲恋

小林古径《清姫》のうち「寝所」 1930(昭和5)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

安珍清姫伝説を題材にしたもので、なかなかのバッドエンドでした。

ざっくりストーリーを説明すると、美形の僧・安珍に一目ぼれした清姫が、
なんやかんやあってストーカー化し、なんやかんやあって大蛇に姿を変え、

最終的に道成寺で彼を鐘ごと焼き殺してしまったという伝説です。

ハッピーな恋愛よりも悲恋のほうが、画になる。

あるいは、日本画家の創作意欲を刺激するのかもしれませんね。

 

 

さてさて、本展で紹介されている「LOVE」は、男女の恋愛に限りません。

娘の初節句のために描いたという速水御舟の《桃花》(山種美術館蔵)や、

 

速水御舟《桃花》山種美術館

速水御舟《桃花》 1923(大正12)年 紙本金地・彩色 山種美術館

 

 

自身の長女をモデルにした小茂田青樹の《愛児座像》(山種美術館蔵)など、

 

小茂田青樹《愛児坐像》山種美術館

小茂田青樹《愛児座像》 1931(昭和6)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

家族への愛が伝わる作品もあれば、

100歳を超えても制作を続けた奥村土牛の《兎》(山種美術館蔵)をはじめ、

 

奥村土牛《兎》 山種美術館

奥村土牛《兎》 1947(昭和22)年頃 絹本・彩色 山種美術館

 

 

動物愛が伝わるラブリーな作品も数多く紹介されていました。

日本画に対して、取っつきづらいイメージを持っている方でも、

親しみやすい作品が多いため、“日本画っていとおしい…っ!”となること請け合い。

本展を通じて、日本画ラバーはきっと増えることでしょう!
星星

 

 

ちなみに。

本展で紹介されていた「LOVE」の中には、

信仰に基づく愛、キリスト教における愛もありました。

 

小山硬《天草(洗礼)》キリスト教美術

小山硬《天草(洗礼)》 1972(昭和47)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

こちらの《天草(洗礼)》の作者は、小山硬さん。

前田青邨に師事し、青邨最後の弟子となった人物です。

彼はキリスト教を信仰する漁師に出逢い、感銘を受けたのを機に、

キリシタンの信仰や伝統的文化を題材にした絵を描くようになりました。

ゴツゴツゴワゴワとした風合いの画風は、

一目で小山さんの作品だとわかるほどに個性的。

さすがは硬(かたし)さん、「名は体を表す」とはまさにこのことです。

なお、日本画としては珍しい太い輪郭線は、

どことなくステンドグラスを想起させるものがありました。

 

 

 ┃会期:2025年12月6日(土)~2026年2月15日(日)

 ┃休館日:月曜

 ┃会場:山種美術館

 ┃https://www.yamatane-museum.jp

 

 

 

 

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