現在、三菱一号館美術館で開催されているのは、
ルノワール×セザンヌ ―モダンを拓いた2人の巨匠”という展覧会。
西洋絵画の巨匠、ピエール=オーギュスト・ルノワールとポール・セザンヌの2人展です。
喫茶店チェーンとコスメブランドに、
その名がそれぞれ使われているほど、
ルノワールもセザンヌも、日本では特に人気の高い画家。
それもあって、彼らの個展はこれまでに幾度となく開催されてきました。
また、ルノワールといえば、モネと並ぶ印象派を代表する画家。
孤高の画家であったポスト印象派を代表するセザンヌとは、接点がないように思えます。
美術史で登場する順番の関係もあって、
セザンヌのほうが一世代下に思われがちですが。
実は2人は、ほぼ同い年。
なんなら、セザンヌのほうが2コ年上です。
そんな2人は、20代でパリにて初めて交流して以来、
生涯にわたって、お互いを認め合うほどの仲だったとか。
ルノワールが肺炎を患った際には、セザンヌが母子で看病したこともあったそうです。
(注展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
そんな知られざる友情関係にフォーカスした本展は、
パリのオランジュリー美術館の企画・監修による世界巡回展で、
イタリア、スイス、香港と世界各地を巡り、ついに日本へと上陸しました。
なお、三菱一号館美術館は日本唯一の会場とのことです。
出展数は、オランジュリー美術館の所蔵品に、
オルセー美術館の所蔵品も加わって、計52点。
それらの中には、ルノワールが50代の頃に、
初めて政府から注文を受けて制作した《ピアノの前の少女たち》や、
ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノの前の少女たち》
1892年頃、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
© GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Franck Raux / distributed by AMF
セザンヌの代名詞とも言うべき、リンゴが描かれた、
静物画の傑作《わらひもを巻いた壺、砂糖壺とりんご》など、
両館を代表するルノワールとセザンヌの名品が数多く含まれています。
ポール・セザンヌ《わらひもを巻いた壺、砂糖壺とりんご》
1890-1894年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
© GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
それら2人の巨匠による肖像画や静物画、
風景画を見比べて楽しめるまたとない機会です。
「楽しい絵しか描かない」が口癖だったというルノワール。
それゆえ、彼が描く絵画はどれも幸福感に満ちています。
一方、「リンゴは動かないぞ!」とモデルに激ギレしたエピソードで知られるセザンヌ。
それゆえ、彼の絵に独得の緊張感が漂っており、
モチーフが放つ存在感からは圧を覚えるほどです。
そんな真逆の画風の2人ですが、
併せて観てみると、不思議としっくりくるものがありました。
強い個性同士がぶつかりあって、
不協和音が生じるかと思いきや、むしろその逆。
競演することで、お互いの魅力を増幅し合っていました。



さてさて、掛け値なしに、どの作品も素晴らしかったのですが。
個人的に特に印象に残ったルノワール作品は、《ガブリエルとジャン》です。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《ガブリエルとジャン》 1895-1896年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
© GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
描かれているのは、ルノワールの次男ジャンと、
その母であるルノワールの妻アリーヌ・・・ではなく。
アリーヌのいとこガブリエル・ルナールです。
ガブリエルは、ルノワール家で乳母兼メイドとして働きました。
何も知らずに観たなら、仲睦まじい母子を、
愛情たっぷりの視線で描いた絵画のように思えます。
そう錯覚してしまうだけに、一瞬、
ルノワールとガブリエルの関係性を疑ってしまいました。
きっと、2人はただの家の主人とメイドの関係のはず。
そう一度はスルーしたのですが(←?)、
展覧会のラストで、ピカソが影響を受けた作品として、
ルノワールの裸婦画が、ピカソの裸婦画と併せて展示されていました。
タイトルは、《横たわる裸婦(ガブリエル)》。
ガブリエルをモデルにした裸婦画でした。
その画面全体に漂う親密さを見るに、
あくまで個人の見解ですが、たぶん2人はグレーです。
ちなみに。
数あるセザンヌの絵画の中で、
とりわけ印象に残ったのが、《赤い岩》。
閉鎖された採石場を描いた作品です。
ポール・セザンヌ《赤い岩》 1895-1900年頃、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
©GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
何よりも目を惹くのは、画面右側の赤い岩。
オーバーハングする断崖が唐突に描かれた様は、
雪舟による国宝《秋冬山水図(冬景)》を彷彿とさせるものがあります。
┃会期:2025年5月29日(木)~9月7日(日)
┃会場:三菱一号館美術館
┃https://mimt.jp/ex/renoir-cezanne/
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