ハイカラか野暮かで迷いしその賭けに敗れてドレス返品にゆく
カーテンを開けたるままに着替えする恥じらいのなさ/春の光線
赤ピンクかくも甘き取り合わせこれを好めるはまぎれもなく我
白き鳩置く公園は残照の中にして光る遊具は鉄色
草の葉の汁の匂いの風吹きてまどろみはふとせつなさをもつ
全身が目鼻となりし心地するそこもかしこも春の蠢動
チューリップの何色よきなど言い合いてゆずれぬ自我をほのかに示す
春空に建築中のビルディングはみるみる育つ人力の凄さよ
ぼけぼけとしてらんないわね私たちビルはますます天に近づく
春の日の白き空間ポッカリと悲しき記憶も白く燃えだす
哀調は朝な夕なに付きまとい笑みの端から吐息の流れる
万物に均しく注ぐ日のシャワーの恩恵にいとも抗い難し
食欲の鬼と化しゆく春の日はがんじがらめの囮となりぬ
春めきの陽気にあおられ髪切れば翌日うなじはクスクス笑いする
髪切ったすがすがしさのありのままこぼれる笑顔で君に会いたし
花咲かの翁の撒ける灰粒は街路を染めて花水木となれ
薫風に笑みこぼしいる五月の日よ自転車飛ばす躑躅街道
待ち詫びし春にひとつの誤算あり花粉シャワーに冒されたれば
しんしんと胸の風穴淋しくてただ淋しくて本屋さ迷う
夜桜の艶景のせし絵はがきを送りし日からさざ波黙しぬ
春の日は水彩絵の具の風景画 風のかたちも目に浮かびたり