リエゾンは言葉遣いに気をつける | kyupinの日記 気が向けば更新

リエゾンは言葉遣いに気をつける

リエゾンの患者さんは精神科で治療しているとは思っていないので、いくつかの点で注意するようにしている。特に家族との関係。

リエゾンの患者さんは「せん妄」など夜間に悪化する人が多いので、家族は実際の患者さんの悪い様子を全然知らないことがある。特に入院してから精神症状が出てきた場合はなおさらである。

だから看護師さんから、精神状態が悪いから精神科医に診てもらうと説明されてもリアリティがない。自分の家族を精神科にコンサルトさせることに内心不満だったりしているわけ。

いい迷惑なのは相談を受ける精神科医。

そういう細かいことまでわかっていないと、ちょっと症状に紛れが出ると、とんでもない苦情を言われたりする。例えば精神科の薬のために認知症になったとか。(←いかにもありそう)

抑肝散でけいれん発作が出た話をアップしているが、あれは良くなったから済んでいるわけで、もし使った薬が西洋薬でもう少しけいれんのリスクがあるとか、その後の患者さんの経過が悪かったりすると相当に心証が悪い(参考)。

こういうのはわりと勘が働き、何かあったとき、「たぶん薬のせいではないだろう」といった処方をしていることが多い。これは28歳頃からそんな風であり、犬のように鼻が効くのである。

家族は精神科の薬は特別と思っている(参考)。抗がん剤などの副作用が強い薬に比べても、違う次元で特別なものと思っているようなのである。

これは家族に限らず、精神科以外の医師もそんな風に思っているところがあり、他科の医師の方がむしろ向精神薬に偏見が強かったりする。医師が、自分の家族に向精神薬を服用するのを禁じているのを目撃し驚くことがある。

もともと、数十年来といった感じで入院している統合失調症の患者さんが年老いた時、たまたま転倒して骨折したとしても、それで家族が強く文句を言うことは比較的稀だ。

家族はかつて入院するまで患者さんのために困っていた歴史があり、長く預かってもらったという気持ちがあるのでさほど苦情は言わないのである。逆に「すみません」と言われることすらある。なぜ「すみません」なのかというと、本人の過失と思っているから。粗相をしたという感覚なのかもしれない。

ところが、何十年間も面会すらないような患者さんの場合は、そうならない。突然、遠方から見たこともないような人がやってきて、いろいろ文句を言われることもある。外泊すら拒んでいたような家族こそ、トラブルになりやすいのである。その点で、面会にも来ない家族の患者さんは注意しておかないといけない。

院内の怪我でもめるのは、やはり統合失調症でない老人である。彼らは入院期間が短く入院に至る人間模様、経緯も関係している。老人を精神病院に入院させるからにはそれなりに精神症状があるもので、老人保健施設や内科の老人病院で診られるような人は最初から精神科には来ない。

やむを得ず精神科に入院しているわけであるが、その辺りの理解も含め、老人患者の子供たちの間でしばしばコンセンサスが得られていない。よくあるパターンは、老人の介護をしていた息子の嫁が体力的に限界に達し、遂に義父(または義母)を入院させた場合。

そんな時に偶然転倒して怪我などした日には、外野が黙っていない。特に遠方に嫁に行っている娘(いわゆる小姑)が、長男の嫁が義務を放棄したとか、姨捨山に捨てたからだと兄嫁を非難するのである。その小姑は親の介護の苦労は全く知らないので、実に勝手なことを言う。

まさにその家族内のトラブルというか人間模様が、怪我をしたとき病院に持ち込まれる。仇を討つべき相手が兄嫁だけだったのが、突然、病院スタッフや医師にも及び、やがてそちらがメインになるのである。怪我をした怒りは、兄嫁もそうであるが、姨捨山と名指しされた病院に向かうのであった。

そういうこともあり、特に老人保健施設などは入所者が怪我をした時、結構トラブルが大きくなるようである。訴訟になる場合もある。(精神病院は長年入院している統合失調症の患者さんの割合が高いのでまだマシな方だ)

リエゾンの話に戻るが、リエゾンでは短期的に悪い結果になる可能性があるケースは、無茶な処方はしないようにする。また家族がモンスター的で病棟スタッフも辟易しているような場合は、特に無難な処方を選ぶ。だから本人の絶対値的な病状ではなく、やはり家族を含めたトータルを見ながら治療を進める。

だからリエゾンは精神科だけど、ちょっと精神科っぽくない面もある。必ずしもストレートに治療できるとは限らないのである。もちろん、家族トータルで診ないといけないのは精神病院でも変わらないんだけど。(参考

元々この業界は患者さんはともかく、家族が大変な人たちの方が精神科医やスタッフは疲れるのであった。

もし、家族から突然、思いもよらないことを言われた時、キレて変なことを言ってしまうのは最悪。

精神科に限らず医療はすべてそうだけどサービス業だから。嫌な気持ちを表情に出さない。まして変なことも言わない。たまにそういうやりとりの際、変な対応のために名誉毀損で訴えられることもありうる。

そんな風になったら、第一、その病院に迷惑がかかる上に、裁判所に何度か行かねばならない時間的損失も大きい(と思われる)。

参考
抑肝散でけいれん発作
精神疾患と服薬
患者さんの家族は