デパケンRと妊娠 | kyupinの日記 気が向けば更新

デパケンRと妊娠

デパケンRは精神科領域ではてんかんと躁うつ病に処方されるが、その他、統合失調症や発達障害など、適応がない疾患にも広く処方されていると思われる。デパケンR、リーマス、テグレトール、リボトリールの気分安定化薬4剤はFDAにより「D」のカテゴリーに入れられている。これは、禁忌の1つ前であり十分に危険性がある薬物群であると言える。

【D】
人の胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても妊婦への使用による利益が容認されるもの(たとえば生命が危険にさらされているとき、または重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないとき、あるいは効果がないとき、その薬剤をどうしても使用する必要がある場合)


デパケンRおよびテグレトールの妊娠リスクについては、神経管欠損(二分脊椎など)の奇形に関係が深いと言われている。これは同じ催奇形性でも重篤であるといわざるを得ない。また、催奇形性は用量依存性がある可能性があるらしい。

同じようなリスクに見えても頻度に差があり、その危険性は

デパケンR   1~5%
テグレトール  0.5~1%

といわれる。もちろん、多剤併用されている場合はより危険。高い血中濃度を避けるため、妊娠中は(中止できないケースでは)分割投与が推奨されている。デパケンRやテグレトールによる神経管欠損の奇形の予防のため、英国では葉酸(4mg/日)の併用を推奨しているようである(モーズレイの精神科治療薬ガイドラインによる)。葉酸は受精から3ヶ月は継続すべきとしている。

ところで、このモーズレイ・ガイドラインの文章はウイットが込められているのでしょうか?
「妊娠を考えている女性はもちろんであるが、ほとんどの妊娠は予定外なので、妊娠可能な年齢でテグレトールやデパケンを服用中の女性にも、毎日4mgの葉酸の投与をすべきであろう」

さて、ビタミン剤はいかにも催奇形性が低そうに見えるが評価としてはそれほどではない。FDAの評価では、通常量でAだが、過剰投与ではCとかそんな風なのである。しかしながら、葉酸は、「A」のカテゴリーに入っている。実はビタミン剤のうち、無条件で「A」は葉酸だけなのである。このあたりの考え方だけど、ビタミンは食物に普通に入っているので、もしビタミンがカテゴリーAでなかったなら、いったい何を食べろというんだという話になる。きっと、ビタミン剤として通常量を大幅に超えて摂るのは良くないのであろう(特にビタミンA)。

葉酸は例外で、これは細胞の増殖に必要なビタミンであって、一般人でも葉酸を豊富に摂るようにすると二分脊椎などの先天異常の発生率が減少すると言われている。このあたりのことは婦人科のドクターの方が詳しいのではないかと思う。

てんかんの場合、デパケンRは急に中止できないケースも多く、処方継続したまま妊娠、出産していることが多いのではないかと思う。僕の患者さんでデパケンを服用して出産した人は、すべて安産で、(見かけ上)健康な新生児であった。彼女たちは運が良かった。上に出てきたデパケンの催奇形性であるが、仮に最大の5%としても20人に1人なのである。

【A】
人の妊娠初期3ヵ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されておらず、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠もないもの。


参考
リーマスと妊娠
エビリファイと妊娠
デパケンR

(このエントリの書き込みにつき、僕はいかなる責任も負いません)