「Thank you for coming.
Thank you for $25.」
来てくれてありがとう
25ドルをありがとう
おじいちゃんはそう言って
ハグしてくれました。
そして
「You'd better go.」
もう行かなくちゃ
そう言って私の背中を
ぽん、と叩いたのでした。
スーツケースを
がらがらと引っ張りながら
おじいちゃんが見えなくなるまで
振り返りながら手を振りました。
26年ぶりに再会し
二週間一緒に過ごした
おじいちゃんとのお別れは
まだ薄暗い朝4時過ぎでした。
小さなラクロス空港から
ミネアポリスに飛ぶ
飛行機の窓から見えた
雲のじゅうたんと
その先から
昇ろうとする太陽が
描く光のラインを
私はただ眺めていました。
日本に帰ると
いつもの毎日が待っていました。
私はあまり
おじいちゃんのこと
ウィスコンシンでのこと
思い出しませんでした。
あっけなく
過ぎたようにさえ感じる
アメリカでの日々が
とても遠くに感じました。
あぶは
「アメリカ滞在記」として
ブログにおじいちゃんとの日々を
書き始めました。
私は
おじいちゃんとのことを
ブログに書く気に
なりませんでした。
長い滞在で
どうまとめたらいいかわからない…
そう思っていたんです。
そんな矢先、あぶが
「アメリカ滞在記~Special Young Lady 編~」
という記事をアップしました。
それを読んで
何かがこみ上げてきて
胸がぎゅーっとなりました。
頭の中が真っ白になって
何も考えられなくなりました。
そして
涙がにじんできました。
ようやくわかったんです。
おじいちゃんと
お別れしてきたことが
とてもさびしかったのだと。
思い出すには
あまりにも美しいことが
たくさんあり過ぎて
私の心は
それが終わったことに
耐えられないとでも
感じたのでしょうか
思い出すことをしないように
頑張っていたみたいでした。
だからブログも
書けなかったのかもしれない。
それまで
あまり思い出さなかった
ウィスコンシンでの時間が
私の中によみがえり
まさに走馬灯のように
(まだ死なない・笑)
流れ出したのでした。
つらいことがあると
人はハートを閉ざしてしまうこと
知っていました。
それを感じるのがつらいと
心がそれをしたくなくて
そうしてしまうと。
まさか自分のハートが
知らないうちに
そんなことをしていたなんて。
それに気づくと同時に
おじいちゃんとの時間が
自分にとってどれだけ大切な
時間だったかということに
気づいたのでした。
おじいちゃんと
おじいちゃんが会わせてくれる
人達との日々は
善意に満ちて
心震えるものでした。
人の美しさを目の当たりにしました。
また、時に
人間が生きるということを
生々しく目の当たりにした
日々でもありました。
アメリカから戻り
私はやっとそのことを
心の中で振り返り始めました。
「Thank you for coming.
Thank you for $25.」
来てくれてありがとう
25ドルをありがとう
静かにそう言ったおじいちゃん
リチャードを思い出す時
涙が溢れてくる自分を
もう許してそのままにしてあげよう
そう思ったのでした。
8月27日深夜
小さなラクロス空港に
降り立った時
おじいちゃんの息子さんブルースと
おじいちゃんリチャードが
「ウィスコンシンへようこそ!」
日本語で
そう書かれた大きな紙を
持って立っていたあの時に
私の記憶は戻っていくのです。
ありがとうだらけの
私達家族の旅が
心の中でもう一度始まりました。
スピンオフ物語
「ヒデイチ」を探してに続く。
おじいちゃんと私
おじいちゃんと私・2
おじいちゃんと私・インスタントレポ
ただいまー
おじいちゃんと私・3【もう一度始まる旅】
「ヒデイチを探して」シリーズ
「ヒデイチ」を探して
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