なんだかんだ言って、人生はうまく転がるように出来ているのかもしれない。
ショートステイの方、どうやら家が私や父宅とお近くとのことで、
「あ、それやったら、僕、地道でお父さん連れていきますわ~」
いやもう天の声かと思った。
「え?本当にいいんですか??」
「いいですよ~。僕の通勤路やしね」
ありがたや・・。本当にありがたや・・。
すでに発熱だけでなく、咳もひどく、声も出ず、倦怠感もあり
ショートステイ先まで連れていけるんか?私?と、思っていた。
とりあえず、父の荷物も準備済みだったので、もしものときのために
お薬だけは多めに持って行ってもらうことにした。
これがのちのち功を奏した。
もうお言葉に甘えることにし、落ち着いて帰宅して入院準備する。
リュックに着替えやら必要品を詰め、よたよたと病院までたどり着く、
すぐに病室に案内された。
人生初の入院。相部屋。
っちゅうか、ここ老人ホーム?
差はあれども、私以外の5人は、ほぼほぼ何かを忘れている。
Aさんは、肩の骨折。リハビリのために腕を回さないと血流が鈍って
なかなか痛みが取れないですよ。と、看護師さんが入れ替わり立ち代わり
来られる人ごとに言われるが、それを覚えていないので、
「腕が痛いんです。ものすごく痛いんです。眠れないんで眠剤ください」
を繰り返す。
午前中のリハビリも毎日行かれているが、午後になると
「私、リハビリに行きたいのに、誰も迎えに来てくれないんです」
を毎日繰り返す。
心の中で「もう行ったよ」と、話しかけてみる。
どのベッドもリモコンで上下出来たり、上半身上げたり、足もとを上げたり
出来るのだけれど、入院した日の数時間後、
看護師さん素っ頓狂な声を上げて
「ぎゃー!!!!!Aさん。何してんの!!!なんでベッドが一番高いところまで
上ってるんよ!!!!」
私がカーテンをぴちっと閉めても、看護師さんによっては、私の用事を済ませたあと
中途半端に開けていかれる方もおられるのでAさんが丸見えやった。
その姿は王子を待つ眠れる森の美女がベッドに横たわっているようやった。
娘さんが二日に1回くらい病室に来られる。けど、この状態はまだ気づいておられない様子で
「お母さん、なんですぐにゴミを貯めるん!!ちゃんとして!!ちゃんと捨てて!!」
娘さん、もうお母さんは出来なくなってはるねん。と、また心の中で話しかけていた。
Bさん。
内科的なことで入院なさってるようやった。
まだいろいろと検査をしている最中で、私が入院した日は記憶力のテストか何かやったらしい。
「私ね。72歳になってまで、テスト受けさせられるとは思わへんかった。
72歳に恥をさらせて、何が楽しいのか分からん。腹立つ。プライドがずたずたになったわ。
負けず嫌いやのに。ボケてもいないのに!!」
これを10回以上は言ってただろうか。 それにしても72歳にしては、かなり老けておられるようやな。
と、思ったら、実は80歳越えやったと後から分かった。
胃カメラとか嚥下のテストとかもしてはったけど、
「なんで病院の協力せなあかんのや!! なんで病院が得するようなデータを渡さなあかんのや!!
検査なんて、全く聞かされてないのに、なんで急にこんなことになるんや!!」
いやいや、前日から看護師さんたちが「明日は胃カメラやから朝ごはん抜きやしね~」って何人も
言ってはったけど・・。そもそも病院のデータ収集じゃなくて、あなたの体が具合悪いからやねんけど。
と、心の中で話しかける。
Cさん。
多分、ほぼほぼ大丈夫な方。
ただ、退院前日に「じゃ明日10時頃には請求書も出来上がって、退院出来ますし」っていう説明は
すっかり忘れておられたようで、退院日に
「え?お昼ご飯食べてから退院でしょ?? じゃお昼ご飯出ないんですか???」
って、何度も繰り返しておられた。
ううん。午前中って言ってはったよ。 お昼ご飯食べたかったんかな?
病棟80人くらいの中で50代は私だけ、CT室に運んでくれるポーターさんが
「ちゃとのママさん、ダントツで平均年齢下げましたよ。アベレージ70から80歳代ですしね」
という状況だったので、しんどさもあり、咳も止まらずだったので、最低限な動き以外は
カーテンを閉めて、誰ともしゃべらなかったんよね。しゃべれなかったが正解。
けど、看護師さんは折に触れて、ちょこっとプライベートなことも聞いてこられるから、
そこの部分に関しては、周りはもう耳をダンボにして聞いておられるのが分かる。
呆けてても、世俗的な話しは別。
そしたらCさん、自分の退院の時に初めて声をかけてきて、
「ちゃとのママさん、お世話になりました~!
20代か30代と思ってたら、社会人のお子さんがいらっしゃるって話しされてたから
随分、若いときにお生みになったんやね!! うちの子は〇〇年生まれなんよ!!」
おお、探ってる探ってる。ちゅうか、ちゃんと眼鏡かけてしっかり見てくれ。
どこをどうひっくり返しても20代や30代には見えんわっ!!!
「娘さん、お若いですね~。ふふ、そこそこ行ってますよ」
年齢なんて絶対に言わない。どこに住んでるかも言わない。どんな仕事してるかも言わない。
ぜったい言わない。
主人の私へのとある失言のせいで、BさんとCさんとE1さんには数日間に渡って針のむしろにさらされた。
なので、とにかくカーテン締め切りを押し通したが、暇やととにかく人のことが気になるんやね。
⑤につづく