
「イライラが繰り返され、落ち着かなくて困っている」状況が続く人にとって、認知行動療法のようなトレーニングをしていく余裕はありません。
そのような人がイライラに対処するには、どうすれば良いのでしょうか?
それを一言でいうと、イライラや怒りを爆発させる前に一旦立ち止まる習慣をつけて、イライラや怒りをコントロールする技術を身につけることです。
このコントロールする技術を「アンガーマネジメント」と言いますが、イライラや怒りを制御することは、心のコントロールの核となるものです。
今回は、イライラや怒りをコントロールする考え方(認知行動療法的なものを除く)を6つ紹介したいと思います。
それを考える場合のポイントは、次の6つです。
最低でも、1.や 2.の考え方は実行されると良いと思います。
少し余裕が出て来たら 3.~ 6.も実行されたら良いでしょう。
1. 自分自身のコントロールに集中する
2. 感情を吐き出す
3. イライラが志向しているものを探す
4. 見返りを期待しないこと
5. 自分のために相手を許す
6. 人のつながり(人間関係)を修正する
1.コントロールできるものに集中する
イライラや怒りが生じたとき、「誰が見ても相手の方が悪い」ということはあるでしょう。
しかし、他人や状況をコントロールすることはできません。
まず、この事実を思い出し、「コントロールできるのは自分自身だけ」という悟りが何より大切です。
人間は自分がイライラや怒りでいっぱいになっているときは大抵、自分自身以外のことに意識が集中しているものです。
しかし相手を責め続けることは、自分の怒りの解消を相手に依存することになるばかりか、「自分に都合良く相手が変わる」ということは簡単に望めることではいのに、それを強く望んで相手を責めるので、相手が変わらないことに対してますますイライラを強めてしまいます。
だからこそ、他人に依存することなく自分の感情をコントロールするためにも自分自身の思考を変えて、状況への対応の仕方を変えていく方が建設的なのです。
ここでは、この「自分をコントロールする」ことの大切さを強く認識しておくことを覚えておいてください。
もちろん、「自分をコントロールする」といっても、イライラ感を息を止めるように即座に止めてコントロールするなんてことはできません。
でも、反射的にイライラしてしまうのを、イライラする前に一旦立ち止まることでイライラ感を無くしたり和らげたりすることはできるのです。
次からは、その方法を見ていきましょう。
2.感情を吐き出す
イライラや怒りの感情を面と向かって「言葉」にすれば、人間関係が悪化するだけです。
考えずにカッとなって「反応」してしまわずに、考えて「行動」することはとても大事です。
「考えて」というのは、「イライラし始めたら、それをどう抑えてその次にどう行動したら良いか」なんてことを考えるというのではありません。
イライラが襲ってきたとき、そんなことを考えている余裕はないと思います。
そうではなくて、考えることはただ一点、「このイライラをどう振り払うか」だけなのです。
目にゴミが入った時、「このゴミ野郎、よくも私を襲ったな!」と言って、ゴミが飛んできた場所を必死で攻撃する人はいないでしょう。
でも面と向かってイライラの感情を相手にぶつけるのは、それと同じことをしている訳です。
やるべきことは、目に入ったゴミをどう取り除くかですよね。
その取り除き方は何通りかあるはずです。
多くの人は、その時の状況に応じて除去方法を選ぶはずです。
「イライラをどう振り払うか」というのも、イライラの除去方法を幾通りか知っていて、状況に応じて瞬時にその方法を思いつくという点が大事です。
その方法の中で、特に大事なのは「感情を吐き出す」方法です。
「吐き出す」と言っても、先ほどから言っているように、面と向かって感情をぶつけるやり方はまずいので、「感情を和らげる」方法を見つけましょう。
この方法もいろいろありますが、ここでは2つ方法をお伝えしておきます。
1つは、「1分間マインドフル呼吸法」です。
呼吸は心とつながっています。
恐怖や緊張を味わった時や、怒りがこみあげてきた時に呼吸がどうなっているかを思い出してみてください。
それなので、心をコントロールする上で呼吸法は大事なのです。
マインドフル呼吸法は、鼻で呼吸をするのが基本です。
そして、呼吸することのみに集中します。
具体的には、呼吸の回数を1分間数えます。
もちろん、時計を見ながら1分計ることはしませんので、「吸って、吐いて」で1回として、60回まで数えるのです。(実際は1分より多くなるでしょう)
呼吸を数えること以外は何も考えず、呼吸にだけ意識を集中します。
どうしても怒りやイライラに意識が向く時は、「怒りやイライラしている自分を見続ける」感覚でいてください。
「あの人が悪い、あの人にどう仕返しをしよう」、「私は情けない、私は立ち直れないかもしれない」などという自他への思いなど一切考えません。
ただただイライラしている自分を見続けるだけです。
イライラしている自分が「灯のともったろうそく」で、息を吐くたびにそのろうそくの灯が揺れて消えそうになることをイメージしても良いかも知れません。
呼吸は、肺式呼吸と腹式呼吸を合わせた「完全呼吸法」で行います。
吸うとき、お腹が膨らんだ後、胸が膨らむようにして、それを感じるようにします。
吐くとき、お腹と胸を同時にゆるませ、お腹をしぼって吐ききっていきます。
これで、吸うときに肺式呼吸、吐くときに腹式呼吸となります。
呼吸やイライラ感そのものに集中することと、完全呼吸をすることで、怒りやイライラ感をかなり鎮めることができます。
「感情を吐き出す」方法の2つ目は、「書き殴り法」です。
体内のネガティブな感情を文字にしてどんどん体の外へと吐き出すのです。
どんなに汚い字でも、汚い言葉でも、非道徳的な内容でも構いません。
別に誰かに見せるために書いている訳ではないのです。
目的は「吐き切ること」なのですから、とにかく全部吐き出してしまいましょう。
できれば、パソコンやスマホなどではなくて、ノートや紙に実際にペンや鉛筆でガンガン「書き殴る」ことをお薦めします。
筆圧をかけたり、デカい字で書き殴ったり、赤色で強調したりと直感的にできるのでスッキリ感が段違いです。
方法は2つだとお伝えしましたが、実は3つ目があります。
それは、上でお伝えした2つの方法でも、怒りやイライラが治まらなかった場合の方法です。
この場合は、怒りやイライラを生じさせた相手に、直接自分の思いを伝えるのが良いでしょう。
この段階では、かなり冷静に自分の思いを伝えることができるはずです。
できれば1日ぐらい間を置いて伝えるのが良いでしょう。
また、上の2つの方法で怒りやイライラが治まっていたとしても、伝えるべきことがあればきちんと伝えておくべきです。
特に、イライラや怒りが生じた場面で、「自分がどんなに傷ついたか、どんな気持ちでいたか」といったことは、相手が分かってない場合もあるので、きちんと伝えておくべきでしょう。
また、上で示した2つの方法のような処置をとらずに、すぐに反応して、面と向かって相手に感情をぶつけた場合でも、その後に上で示した方法のような対処をしておいて、後で相手に謝罪と自分の気持ちを伝え直すということをされたら良いでしょう。
うつ病で自宅療養をしている私のクライアントさんの一人は、イライラ感を溜めやすいタイプの人で、母親に時々イライラを爆発させることがあるのですが、母親もそれでイライラしてしまっているようです。
しかし、2人とも、感情のぶつかり合いがあった後は必ず、メールで互いに謝罪や気持ちの伝え合いをしています。
この親娘は、自分でイライラをコントロールする方法を身に付けたら、「最後にどうしたら良いのか」を心得ている分、アンガーマネジメントがきちんとできる親娘となることでしょう。
マインドフル瞑想法やヨガなど、イライラをコントロールする方法はいくつもありますが、これらはイライラが鎮まって平静時に習慣づけするようトレーニングすることが大切になります。
ここでは、イライラが生じた瞬間に取ったら良い方法に限定しておきますね。
(※マインドフルについての説明はここを参照してください。)
3. イライラが志向しているものを探す
人がイライラ(怒り)を感じるには、大別して2つの要素が必要です。
1つは「被害にあった」という感覚、もう1つは「加害者の責任性」です。
ということは、イライラは、必ず、被害に合わせた相手(加害者)を志向している(相手に向かって発せられている)ことになります。
その志向しているものが何かを探すことも、イライラを鎮める上で大切な方法です。
これは、イライラが生じている最中にできるものではないですから、イライラが鎮まっている状況でとるべき方法です。
「イライラする」というのは、どういう状況のときに生じるかを想像してみてください。
車の渋滞に巻き込まれたとき生じるイライラは、「スムーズに車が進んでいたら得られていた状況と、今自分が置かれている状況の間の差異」から生じていると考えることはできないでしょうか?
もし「スムーズに車が進んでいたら得られていた状況」が、「ディズニーランドで楽しくデートをする」だったら、イライラは激しいものになるでしょう。
それが、「会社の嫌でたまらない会議に出なくてはいけない」だったら、イライラはそれほど募らないのではないでしょうか。
本当に自分に必要なものと、今自分がとりあえず満たそうとしているものとの差異がイライラを生じさせているといっても間違いないようです。
差異として考えられるのは、次の3つの点での違いだと思われます。
(1)自分にとって本当に必要なものが、「過去の欲求か今の欲求か」の差異
(2)「見せかけの承認と本当の承認」または、「日頃得ている満足と本当に欲しいもの」
(3)相手が与えてくれる満足感と自分が得たい満足感の差異
これらを簡単に見ていきましょう。
(1)自分にとって本当に必要なものが、「過去の欲求か今の欲求か」の差異
これは、自分が本当に必要とするものが、今欲しいのか、過去に欲しかったのか、ということです。
アルコール依存症の例で言えば、子どもの頃、家庭にめぐまれず、家庭の温かさにあこがれて寂しさを感じてイライラし、アルコールに浸るというのなら、それは、その人が本当に必要とするものは、過去に欲しかったものということが言えます。
これが、かつては一家団欒の家庭だったのに、今の家庭に温かさがないことからくるイライラだったら、本当に必要なものは「(あたかい家庭を求める)今の欲求」となります。
このように、イライラが志向しているものが、「過去の欲求か今の欲求か」を探ることは大事です。
(2)「見せかけの承認と本当の承認」または、「日頃得ている満足と本当に欲しいもの」
子どもの頃に、温かい家庭生活をあきらめていると、その人にとっては、温かい家庭生活はこの世にないものになりますので、それに代わる「この世界にあるもの」で自分を満たそうとします。
それは何か目の前の事を頑張って「評価」をもらったりすることかも知れません。
精神的に自分が承認をもらえることが身の回りにいっぱいできると、「本当は温かい家庭が欲しい」という思いと見せかけの承認満足の間にギャップが生じます。
そうして、「なんか満たされない」ということになり、イライラが生じてきます。
これが「見せかけの承認と本当の承認」とのズレです。
「日頃得ている満足と本当に欲しいもの」とのズレは、例えば、優等生のように、一応持ち上げられるけれど、少数派になってしまうことで、本当の意味で自分の感じていることを理解する人がいなくなることから来ます。
日頃チヤホヤされることから得る満足と、本当に自分が求めている満足との間にギャップが生じ、イライラしたりすることもあります。
(3)相手が与えてくれる満足感と自分が得たい満足感の差異
先のアルコール依存の例で言えば、同棲をして相手からもらう家庭的な温かさに満足感を得ていても、どこか今一つ心から満足しないことがあったりします。
その満足感の差異は、同棲相手が忙しい人で、一緒にいるときは、とても優しくしてくれるんだけど、どこか、自分がいなくても、相手は平気でいられるような感じがするといった気持ちを持った時に現れたりします。
これは、自分自身の問題というよりも、相手の問題が大きく絡んでくる問題でもあります。
もしかしたら、「自分が得たい満足感」をそう簡単に受け容れることはできないと、相手は警戒しているのかも知れません。
いずれにせよ、今自分が直面しているイライラ感をていねに観察することで、感情や衝動が求めているものが何かを、自分が満たそうとしているものの差異から考えてみることは、イライラをコントロールする上でとても重要なことなのです。
「イライラ感をていねに観察する」とは、例えば、イライラを生じさせる場面というのは、だいたい同じパターンになっているはずですので、それに気づいて、それを手掛かりに考えてみます。
あなたは、夫が女性社長のことを家庭で話す時、いつもイラつくことに気づいたとしましょう。
なぜイラつくのか色々考えてみると、「主婦であっても、いつかバリバリと働きたいと思っているのに、それができていない今の自分と、バリバリ働いている女性社長とのギャップ」からイライラが生じていると分かりました。
これは「今の欲求」の差異ですね。
ところが、さらに考えてみると、「家事と子育てで仕事ができなくて愚痴を言っていた自分を、かつての夫は慰めていたのに、今の夫は、仕事ができるようになっても仕事ができない自分に冷たい感じがする」というギャップも、イライラの一因だと分かりました。、
これは「過去の欲求」の差異ですね。
この2つから、それなら、「今の自分は仕事をどうするか」、「今の自分と夫の関係はどうあるべきか」といった課題がはっきりとしてきます。
このようなイライラがもたらしてくれる課題を自分で見つけることができたら、もうイライラ感はかなり軽減できているはずなのです。
仮にその課題に解決策が見つからなくても、その解決策を探している最中は、イライラも随分少なくなっていることでしょう。
前回と今回で、「いつもイライラする不快感に対処するために」は終えるつもりでしたが、今回の内容が長くなってしまいました。
特に 2.や 3. の内容が大切だと思うあまり、ついつい書き過ぎてしまいました。
いったん、頭を休める意味で、今回はこれだけにしておいて、4.以降の内容は来週月曜日に記述したいと思います。
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