魔女とレヴィ 第1話 十六夜の魔法  



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「そういえば――俺はお前のことを何も知らない。」

レヴィは黒いビオラの花を指でなぞりながら、

月明かりのような瞳を細めた。


「名前も、何者なのかも知らない。

 それで“助けてくれ”とは……なかなか大胆じゃないか?」


「……そう言われると、確かに図々しいわね。」

百合夜は小さく苦笑した。


「でもね、放っておけないの。

 この庭のハーブたちは、ただの商売道具じゃないのよ。

 病気の人を癒やしたり、傷ついた心を和らげたり……

 私にとっては、“人を救う魔法”そのものなの。」


レヴィは、片眉をわずかに上げて見つめた。

風が吹き、黒髪がさらりと揺れる。


「ふうん……立派な使命感だな。

 俺には理解できないが。」


「理解しなくていいの。

 ただ、今のままじゃ――この庭が全部、死んでしまう。」


その言葉に、レヴィの瞳が一瞬だけ揺れた。

それは哀れみでも興味でもなく、

ほんのわずかに滲んだ、名もなき情だった。


「……で、俺に“それをどうにかしろ”と?」


「あなたならできるでしょ?

 あの夜、妖精の姿を見せてくれたみたいに。」


レヴィは小さくため息をついた。

「やれやれ……本当に、面倒な女だ。」


それでも、黒いビオラの前から離れず、

その花弁をひとひら指先ですくい上げながら、

小さく呟いた。


「……まぁ、暇つぶしには、いいかもな。」




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