十六夜の魔法 

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それから、いく日かが過ぎた。


百合夜は毎朝、庭に出て花々の様子を見守った。

けれど――変わらなかった。

むしろ、悪い方へと進んでいるように思えた。


風が通るたび、どこかで影が走る。

視界の端で、小さな羽音や、かすかな笑い声が聞こえる。

けれど振り返った時には、そこにはもう、何もいない。


「……また、枯れてる。」



フィーバーフューの白い花が、今朝はすっかり色を失っていた。

いつもなら薬草棚に吊るして乾かすはずの花も、

今日はどの茎もぐったりと倒れている。


「お願い、これ以上は……」


百合夜は両手を合わせ、静かに目を閉じた。

そして、いつものように小さな皿を持ってくる。

そこには――乾いたセージと、少しのミント。

どちらも“浄化”に使う、神聖なハーブだった。


彼女はそれを枯れた花の根元に供え、

やさしく指先で土を撫でる。


「この庭を守ってくれたら、また春に、新しい命を植えるわ。

どうか、怒らないで……ね?」


その声に応えるように、風がひとすじ吹き抜けた。

皿の上のセージの葉がひらりと舞い上がり、

空気に溶けるように香りを残して消えていく。


百合夜はそっと目を開けた。

その香りにまぎれて――ほんの一瞬、

黒い影が茂みの奥で揺れたように見えた。


「……やっぱり、まだ収まってないのね。」


ため息とともに、彼女は膝を抱えた。




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