魔女とレヴィ 第1話 十六夜の魔法 


思わず手を伸ばす。

けれど、その指先が触れるよりも早く、風がふっと吹き抜けた。

次の瞬間、そこにはもう誰の姿もなかった。


「……行っちゃった。」


庭の奥で、黒いビオラだけがひとり、静かに揺れている。

その花弁が月を映し、まるで小さな灯のように夜を照らしていた。


「変な人――ううん、妖精、か。」


百合夜は苦笑し、そっと花に手を伸ばす。

けれど今度は、もう何も語りかけなかった。


ただ、風の音と、遠くで鳴く虫の声だけが――夜を満たしていた。