1950年代までは中国でも繁体字
中国における簡体字の歴史は意外と浅い。簡体字が正式に公布されたのは1956年(簡体字方案)。それ以前は中国でも普通に繁体字が使われていたし、公布後しばらくはまだ定着せず、50年代の出版物には繁体字簡体字まぜまぜで表記されているものも多い。
中国では簡体字に変わったが台湾では繁体字のまま
つまり、中国では1950年代に規範が簡体字に変わったが、台湾では繁体字のまま現在に至る...ということなのだ。それはなぜか。一言で言うと、戦後、中国語を台湾の「國語」に決めた国民党が繁体字を好んだからである。国民党は中国大陸における民国期、国共内戦の時も、ずっと繁体字や注音符号が好きだった。労働者、つまり一般庶民もわかる使える「国語」作りをめざしていた共産党に対し、国民党は中華の伝統を頑なに守り、保守的な「國語」のままであろうとしていた。
国民党の保守性が色濃く残った台湾の「國語」
とにかく国民党は昔から伝統的な「國語」が好きだった。繁体字こそが、中華民国の「國語」における唯一無二の正式な文字だというのが当時の国民党の主張。漢字を簡略化するなどもってのほか。1939年には「第一次簡体字表(1935年}」を撤回し簡体字禁止の通達まで出した。その伝統的な「國語」を1945年に台湾に持ち込んで、以後長い間国民党独裁政権が続いていたので、台湾の言語政策には国民党の保守性が色濃く残っているのである。
台湾でも漢字簡略化の動きはあった
実は台湾でも漢字簡略化の動きがみられなかったわけではない。ただ1960年代からの「中華文化復興運動」で繁体字がその一つの拠り所とされると、その動きにブレーキがかかった。1976年には学校における簡体字の教育及び使用は禁止されてしまう。
台湾では繁体字ではなく「正体字」という呼称も
繁体字はそのまま中華文化の真髄としての地位を確立。民進党政権時代の激しい「台湾化」の荒波も乗り越えて現在に至っている。ちなみに「繁体字」という言い方は、「簡体字」との関係で使われることが多いが、台湾での正式な言い方は「正体字」だという主張もあるので、用語の使用には気をつけたいところ。