第4話 イタリア最北端のオリーブオイル産地ガルダ湖へ
ヴェローナのホテルを出発し、市内を抜けて高速道路へ入りました。
ミラノとベネチアを結ぶこの道は、車線も広く、どこまでも走りやすい。
旅も終盤に差し掛かり、右ハンドルにもすっかり慣れてきました。
40分ほど走ると、デセンツァーノ・デル・ガルダで高速を降ります。
そこから15分ほどで、今回の目的地であるオリーブオイル農家に到着しました。
紹介してもらったのは、Monte Croce。
ガルダ湖周辺で栽培される品種「カザリーヴァ」を、栽培から搾油、販売まで一貫して行う生産者です。
門をくぐると、右手にはオリーブ畑、正面にはガルダ湖。
静かな風景の中に、この土地の豊かさが広がっていました。
ガルダ湖はイタリア最北端のオリーブオイル産地。
湖の深い水が冬の冷たい空気をやわらげることで、オリーブやブドウ、さらにはレモンまで育つ特別な気候をつくり出しています。
そのためこの地域は、オリーブオイルとワインの名産地としても知られています。
オーナーのパオロさんに迎えられ、搾油所の中へ。
カザリーヴァの特徴や搾油方法の説明を受けたあと、テイスティングルームへ移動し、2種類のカザリーヴァを試しました。
一口含んだ瞬間、思わず驚きました。
軽やかでありながら、芯のある味わい。
南部のオリーブオイルのような派手さはなく、どこまでも澄んだ上品な香りが続きます。
用意していただいたブルスケッタにたっぷりとかけてみると、それだけで一つの料理として完成していました。
オリーブオイルは「ただの調味料」ではなく、
香りであり、旨味であり、味わいであり、料理そのもののまとめ役となるのだと、改めて感じます。
搾油所の出口に差し掛かったとき、一人のご婦人が声をかけてきました。
「あなた、日本人?」
息子さんが日本の自動車会社に出向していること、そしてここへオリーブオイルを買いに来ていることを話してくれました。
そして突然、
「私、何歳に見える?」と。
少し考えて、「77歳くらいでしょうか」と答えると、
その方は微笑みながら言いました。
「100歳よ。」
言葉を失いました。
100歳の女性が、おしゃれをして、
クリスチャン・ディオールのバッグを持ち、
自分でオリーブオイルを買いに来ている。
その姿は、この旅の中でも強く印象に残る光景でした。
思わず尋ねました。
「私もあなたのように、100歳まで元気でいたいです。どうすればいいですか?」
その方は、にっこり笑ってこう答えました。
「質の良いオリーブオイルを摂ることよ。」そう言ってウインクしました。
シンプルですが、とても深い言葉でした。
そのあとガルダ湖のほとりへ向かい、ローマ時代から続く温泉地を訪れました。
今回は時間がなく立ち寄るだけになりましたが、この湖の美しさは、一度来るとまた戻ってきたくなる特別なものがあります。
ミラノからも近く、次はこの場所だけをゆっくり旅したいと思いながら、帰路につきました。
今回の旅の中で出会ったカザリーヴァ。
その味は決して強く主張するものではありませんが、料理や食材に静かに寄り添い、全体を引き上げてくれる存在でした。
そして、あの100歳の女性の言葉。
「質の良いオリーブオイルを摂ること」
その言葉を思い返すたびに、
オリーブオイルは単なる調味料ではなく、
日々の暮らしを静かに支えるものなのだと感じます。
この旅を通して出会ったカザリーヴァ。
もし機会があれば、ぜひ一度味わってみてください。
きっと、食卓の風景が少し変わるはずです。
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