第3話 オリンピック閉会式の地、ヴェローナへ
ヴァルドッビアーデネの丘陵地帯を後にし、次に向かったのはヴェネト州の古都ヴェローナ。
2026年冬季オリンピックの閉会式が行われた街です。
プロセッコのブドウ畑が続く穏やかな丘陵を南へ下っていくと、
やがて平野の向こうに歴史ある街並みが見えてきます。
ヴェローナといえば、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の舞台として知られる街。
ローマ時代の名残がある町には、穏やかな丘があり川が流れる優雅な町です。ヴェローナの旧市街は小さく、ほとんどが歩行専用の道なので、スムーズに回ることができます。
しかし実際に歩いてみると、この街の魅力はそれだけではありません。
街の中心には、2026年冬季オリンピックの閉会式が行われたローマ時代の円形闘技場「アレーナ」が今も堂々と残り、夏にはオペラやコンサートが開催されます。
そして、その周りには人々の日常の暮らしが静かに広がっています。
歴史的な街でありながら、どこか落ち着いた生活の匂いがする街。
それがヴェローナの第一印象でした。
そして、こういう街には必ずその土地らしい料理があります。
ヴェローナの郷土料理といえば”馬肉料理” 赤ワインで長時間煮込む馬肉料理
Pastissada de caval や馬肉のタルタルが有名です。
魚料理で印象に残っているものは、香ばしく焼いたポレンタの上に、塩漬けの鱈をゆっくり煮込んだ料理、バカラです。
北イタリアは海から遠い地域ですが、昔はヴェネツィア共和国の交易によって塩漬けや干した魚が内陸まで運ばれていました。
その名残が、この料理なのだそうです。
ほろほろと崩れる柔らかな鱈と、香ばしいポレンタ。
そしてそこにたっぷりと使われたオリーブオイル。
シンプルな料理なのに、どこか奥行きのある味わいに、その土地の食文化の歴史と奥深さを垣間見た気がしました。
イタリアを旅していると、よく思うのですが、本当に豊かな料理とは、高価な食材ではなく、その土地の暮らしから生まれるものなのかもしれません。
そして翌日のランチに、もう一つ忘れられない味に出会いました。
レストランでパスタと一緒に出てきたのは、焼きたてのブリオッシュと小皿に注がれたオリーブオイル、そして少しのバルサミコ酢。
オリーブオイルにバルサミコ酢をほんの少し合わせ、そこに温かいブリオッシュを浸して食べる。
それだけのことなのですが、その美味しさに思わず驚きました。
使われていたオリーブオイルは、近くのガルダ湖で作られているオリーブの品種”カザリーヴァ100%”のものでした。
北イタリアらしい軽やかな香りとやわらかな果実味。
そこにバルサミコの酸味が加わると、シンプルなのに驚くほど奥行きのある味になります。
パンとオリーブオイル。
本当にそれだけなのに、こんなにも心に残る味になる。
こういう瞬間に出会うと、旅の豊かさとは、豪華さではなく思いがけない美味しさとの出会いなのだと感じます。
そしてその夜、どうしてもこのオリーブオイルの産地を見たくなりました。
翌日はミラノに向かう予定ですが、早朝に出発し途中下車して、そのオリーブオイルの産地に立ち寄る計画を立てました。
目指すのは、イタリア最北端のオリーブオイル産地ガルダ湖。
この旅で、あのカザリーヴァにもう一度出会うことができるでしょうか。
次回は、北イタリアの美しい湖畔、ガルダ湖へ向かいます。
4話へつづく
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