7年の時を経て再び、台風が紙垂を運び去った
季節外れの台風が、裏庭に鎮座する屋敷神様の紙垂(しで)を運び去った。
半紙と割り箸を使い、不器用な手で拵えた紙垂。
あれっ?前にも同じことがあった!
ブログの記録を辿ったら、2019年10月13日
「台風が運び去った紙垂(しで)」
という記事があった。
当時は、どんな時期だったのだろう?
ブログ記事を辿っていくと、2020年6月のエリック来日ツアーの告知などをしていた。
エリックを戸隠にお招きし、エリックスエッセンスのセミナー開催と共に五社巡りをする段取りを。
そして、方向音痴な私を気遣ってくださった五月女文枝さんが、なんと、車を出してくださり、何度も戸隠まで足を運んで下見を重ねたのだ。
ところが、この後から、パンデミックが本格化し、外出自体が難しくなった。
そして、年が明け、悩んだ末、来日ツアー中止の決断をしたのだ。
なかなか外に出られない。
人とリアルで会えない。
そんな毎日、オンラインで繋がっていったことで、リアルでは会うことのなかった日本各地の人々とご縁を結ぶことができた。
振り返ると
「視点を変えることで、新しい世界が広がった」
そんな機会を得た時期だったと思う。
だとすると、今回の台風が紙垂を運び去ったことにも、もしかして、何か大切な意味があるのかもしれない。
2019年10月のブログの抜粋
紙垂の形は稲妻ともいわれる。
浅田次郎氏の『神坐す山の物語』の中に、紙垂にまつわる不思議なお話が登場する。
浅田氏が子どもの頃のできごと。
奥多摩の武蔵御嶽山(むさしみたけさん)と言う霊山に太古から鎮座する神社があり、浅田氏のご母堂の実家は、代々その山上で、神官を務める傍ら宿坊を営んでいたそうだ。
その神坐す山の花々は、一夜の春の嵐で跡形もなく散らされるとのことである。
「女中たちが大階段を駆け上り、慌ただしくガラス窓を開けた。
『神様がお通りになるんだから、心配は要らないよ』
そうこうしているうちに、家中の人々が大広間に集まってきた。押し入れから布団が担ぎ出された。
やがて、夜の闇ではない黒雲が屋敷にのしかかったと思う間に、雷鳴が耳を割き、光が爆ぜた。
私は生きた心地もせず、布団にくるまって誰だかわからない人にすがりついた。
しかし神の顕現を見落としてはなるまいと思って、薄闇に目を見張っていた。
突然、関東平野に向いた裏庭が金色に染まり、太い光の束が大広間を貫いて長屋門まで突き抜けた。
それはほんの一瞬ではあったが、鋸の刃のように鋭く尖った稲妻の形が、決して思い過ごしではなく、私の目にはっきりと見えたのだった。
不思議なことに、柱にも鴨居にも焦げ跡ひとつなく、山中のどこかに雷が落ちたわけでもなかった。
だとするとあの稲妻は、大広間にうずくまる人々の頭上をかすめ、柱を避けて門から出て行ったことになる。
大気中の放電現象と言うよりも、神渡りとする方がまだしも納得がいく。
やはり私が幼い日に見た一瞬の鋭い光は、神の顕現だったに違いない。
外国から渡来した神仏には、愛だの慈悲だのという人間性があるのだが、日本古来の神は超然としており、ひたすら畏怖すべき存在である。
そうした意味では、一概に宗教とは言えまい。
私たちは未知なる自然や神秘なる現象を総括して、固有の神とした。
長い歴史の中で、預言者の出現すら許さなかった、恐ろしい神である」
古の日本人は病や貧しさをもたらすものさえも「悪魔」とは呼ばなかった。
畏怖の念をもって、その存在を「疫病神」「貧乏神」と呼んだのだ。
神として崇め、祀ることで、そのお働きを鎮めてきたのである。
本来、自然霊とは無道徳霊だ。
人間の道徳観、倫理観で計ることのできる相手ではない。
古の日本人は、自然霊の声をよく聞き、共存してきたのだと思う。
紙垂を眺めていると、そんな光景が浮かんでくる気がする。
消えた紙垂は結界の更新
2019年、紙垂は飛ばされた。
その後、私は予定していた未来を失った。
しかし振り返れば、それは失うためではなく、新しい世界へ導かれるためだった。
今回もまた、季節外れの台風は紙垂を連れ去った。
もし自然の働きが何かを告げているのだとしたら、それは警告ではなく、
「そろそろ次の景色へ進みなさい」
という静かな合図なのかもしれない。
神は人間の都合では動かない。
風が吹けば花は散り、雷が走れば闇は裂ける。
だからこそ古の人々は、その働きを善悪ではなく「神」と呼んだのだろう。
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