「愛しき、我が夫よ

なぜ、お逃げになるのじゃ。

愛しい妻の手にかかって死ねれば、本望であろう?

黄泉の国で、永遠(とわ)に仲睦まじゅう暮らすのじゃ。

もう決して、お前さまを離しはせぬ!」

 

イザナギとイザナミの国生みと黄泉での再会

 

 

 

 

記紀の中でも、最も恐ろしく切なく、そして、愛される物語ではないだろうか?

 

イザナミは火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)を生んだ際

大火傷を負って亡くなったとされるが、ひどい難産だったということなのだろう。

 

 

夫のイザナギは亡き妻を取り戻すため、黄泉の国へと赴く。

 

生きて意識を保ったまま霊的世界を訪れることを「秘儀参入」という。

 

私たちのアストラル体と自我は、毎晩、眠っている時、霊的世界を訪れているが、そこでの体験を覚えていることはできない。

 

なぜなら、記憶を司るエーテル体は、肉体と共に布団の上に置いていくからだ。

 

エーテル体は記憶と同時に、生命力をも司っている。

 

つまり、肉体とエーテル体が離れることは死を意味する。

 

歴史的に、霊的修行を行う人々は、霊的世界での学びを地上に持ち帰るため、肉体だけを地上に残して、エーテル体ごと霊的世界へ旅立つ行を試みた。

 

それが秘儀参入者と呼ばれる人々だ。

 

それは、よくある「臨死体験」とは異なる。

 

生命力を司るエーテル体を肉体から切り離すわけだから、秘儀参入は命がけである。

 

肉体に戻ることができず、そのまま死を迎えた秘儀参入者たちも多くいた。

 

つまり、生きて記憶を保ったまま黄泉の国を訪れたイザナギは秘儀参入者だったということだ。

 

さて、黄泉を訪れたイザナギの目の前には恐ろしい姿に変わり果てたイザナミが。

 

 

 

 

朽ち果てた姿を見られ、怒り狂うイザナミ

 

次々と襲い来る恐ろしい鬼たちから逃げるイザナギ

 

 

けれど、それらは本当に鬼だったのだろうか?

 

 

 

 

黄泉の国は鏡像の世界

 

妻の命と引き換えに生まれたヒノカグツチへの憎しみが、心の景色となって外側へ現れたのでは?

霊界参入者はまず「境域の小守護霊」に出会うとシュタイナーは言っている。

 

それは思わず怖気立つような妖怪じみた姿をしているそうだ。

 

ところが、その姿は自分自身の善い行いと悪しき行いを素材として作られているらしい。

 

つまり自分自身の内面が形状化して見せられるということである。

 

イザナギが出会ったのは、変わり果てた妻などではなく、境域の小守護霊だったのではないだろうか?

 

 

 

 

そして、心の曇りを完全に浄化した時、「境域の小守護霊」は光り輝く壮麗な姿に変じるのだそうだ。

 

やがて菊理姫が現れ

「私が悲しみ慕ったのは、私が弱かったからだ」

と悟ったイザナギ

 

 

この時、黄泉守道者(よもつちもりびと)が言った、

「イザナミノミコトからお言葉があります。

『私はあなたと既に国を生みました。

このうえ、なぜ、生むことを求めるのでしょう。

私はこの国に留まりますのでご一緒には帰れません』

とおっしゃっておられます」

 

国作りの役割を終えたイザナミは、死者を導き、新たに転生させる重要な仕事を担うようになっていた。

 

 

 

 

もう過去を振り返ってはいないのだ。

 

それを受け入れたイザナギは霊界を立ち去り、迷いの心を洗い清め、天照大御神・月読命・須佐之男命という三貴神誕生という最後の重要な神生みを成し遂げた。

 

※画像はイラストACより

「円相」さまの作品をダウンロードさせていただきました。

 

劇団雷花のオンライン紙芝居

『イザナギとイザナミ』

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