あの夜、雨が止んだあと、獣の咆哮のような風が吹き荒れていた。
まるで過去を洗い流すような蠍座満月の夜、私は人生を変えた親友と夢で再会した。
声を出せなかった幼い私を、もう一度「世界へ連れ出す」ために――。
幼稚園時代、HSC気質が強く、場面緘黙症で、ほとんど声を出さないまま卒園した。
小学校に上がっても、その延長。
とにかく外界が恐ろしかった。
そんな恐れと緊張の世界を変えてくれた人物が、突然、現れた。
1人のクラスメートである。
彼女は、小学校に上がって、初めてできた友達である。
あれほど外界が怖かったのに、身長が同じくらいで、席が前後になることの多かった彼女とは、なぜか自然に話せたのだ。
そこから世界が少しずつ開いた。

やがて、家族ぐるみの付き合いになり、お互いの家に泊まり合うほどの仲に。
彼女がいたから、私はクラスの中へ溶け込むことができたのだった。
夢の中の私たちは、今の年齢ではなく、二十代くらいの若い大人の姿。
私たちは一緒に出かけていた。
すると突然、彼女が言った。
「目を合わせて、お互いに見つめ合おう」
言われたとおりに視線を合わせると、
透き通った優しさの奥に、静かな意志を宿した薄茶色の瞳が。

言葉はなくても、何か大切な確認をしたような感覚。
その後、私たちはバスに乗って移動。

どこかの大きな会館の前で降り、エントランスで待っていると、彼女が後からやって来た。
彼女は銀色のコインを持っていた。
「バスにはPASMOで乗れるよ」
そう伝えると、「持っていない」と彼女。

なぜその会館へ来たのか。
目的は最後まで分からなかった。
——けれど、目が覚めたあと、静かに理解した。
あの親友は、過去の人物でありながら、同時に「かつての私自身」だったのだ。
声を出せなかった子どもの私。
世界と繋がることを怖れていた私。
そして、誰かとの出会いによって外の世界へ歩み出した私。
夢の中で私たちは再会したのではなく、
もう一度、同じ方向を向いたのかもしれない。
満月の夜。
雨が感情を洗い流し、風が古い殻を吹き飛ばしたあとに訪れた夢。
それは——
「もう次の場所へ行こう」
と、魂が静かに告げてくれた合図のように感じている。
シルフェ![]()
阿部小百合![]()
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