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​こんにちは。
やすよ(冨田恭代)です!
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わが家のベランダに作られた小さな蜂の巣を、

住人がいない隙を狙ってこっそり撤去した。

 

 

翌日、戻ってきた蜂は、

消えた巣を何度も何度も確認するように、

激しくその場所をぐるぐる飛び回っていた。

 

 

その必死な姿をじっと見つめていたとき、

私は「もし私がこの蜂だったら、

全く同じ行動をするかもしれない」と、

人間の不器用な思考の癖を重ね合わせていた。

 

 

ある日ベランダの片隅で見つけた、

まだそれほど大きくない蜂の巣から始まった。

 

 

観察していると、その蜂には

決まった行動パターンがあることが分かった。

 

 

早朝のまだ涼しい時間帯には、

どこかへ出かけていて姿がない。

 

 

しかし、お昼前後の

いちばん太陽が高くなる時間になると、

必ずその場所に戻ってきているのだ。

 

 

仲間をたくさん引き連れて

ブンブン暴れ回るわけでもなく、

いつもたった一人の警備員のように、

静かに、そして健気に

自分の作った巣を見守っていた。

 

 

毎日毎日、時間になると

当たり前のように

そこに座っている蜂を見ているうちに、

なんだかちょっとしたご近所さんのような

親近感すら湧いてくる。

 

 

特別な実害があるわけではない。

けれど、いくらご近所さんとはいえ、

「蜂」である。

これ以上巣が巨大化して、

ベランダに一歩も立ち入れない

立ち入り禁止区域にされてしまっては困る。

 

 

そこで私は、蜂がいつものように

外出している早朝の時間を狙って、

レンジでチンする予定はないけれど、

アイラップというビニール袋を手に取り

その小さな蜂の巣をごっそり

跡形もなく排除した。

 

 

作業は一瞬で終わり、ベランダの壁は

何事もなかったかのように

キレイな更地に戻った。

 

 

「よし、これで一件落着だ」

人間の勝手な都合で申し訳ないとは思いつつも、

私はホッとした気持ちで部屋に戻った。

 

 

だが、本当のドラマが始まるのは、

ここからだった。

 

 

翌日の昼、案の定、

あの蜂がいつものルーティン通りに

ベランダへ現れた。

 

 

そして、自分の家が

あったはずの空間に到達した瞬間、

蜂の動きが明らかに動揺したように変わった。

 

 

「え? ない。確かにここに

建てたはずなのに、ない」

 

 

そう言わんばかりの勢いで、

蜂は壁の同じ場所を何度も何度も、

ぐるぐると旋回していた。

 

 

それは通り過ぎるような飛び方ではなく、

「私の見間違いだろうか」

「計画の間違えだったのか」と、

何度も現実を確認し、

答え合わせをしているかのような

飛び方だった。

 

 

何分もの間、

蜂は更地になった壁に向かって

寄せては返す波のように

行たり来たりを繰り返し、

消えた巣の残像を追いかけていた。

 

 

その次の日、ベランダを見てみると、

さすがに諦めたのか

蜂の姿はどこにもなかった。

 

 

「さすがに天敵の存在に気づいて、

別の安全な場所へ引っ越したのだろう」と、

私は勝手に納得していた。

 

 

ところが、数日後。

ふとベランダに目をやった私は、

目を疑った。

 

 

なんと、あの蜂が、数日前と同じ場所に、

何事もなかったかのように

ちょこんと座っているのだ。

 

 

...そしてそのさらに翌日には、

信じられないことに、

またゼロから同じ場所に

新しい蜂の巣を作り始めていた。

 

 

私はその光景を見て、驚くと同時に、

なんだか胸が痛くなった。

 

 

「なぜ、わざわざ

一度破壊された危険な場所に、

もう一度材料を運んでまで

戻ってきたのだろう」と、

蜂の思考の裏側を、

勝手に妄想せずにはいられなくなった。

 

 

蜂が何を考えてその行動に出たのか、

昆虫の頭の中のことは分からない。

 

 

けれど、もし私が蜂の立場だったら、

もしかしたら全く同じ行動を

してしまうかもしれない、

と共感してしまったのだ。

 

 

もし私がその蜂なら、

巣が突然消え去ったという

理不尽な現状に対して、

 

「これは、外側にいる

巨大な天敵(人間)に壊されたのではない。

何か、私自身に原因が

あるんじゃないだろうか」

 

「私の土地の選び方が不注意だったから、

風で飛ばされてしまったのかもしれない」

 

「私の巣の作り方の

強度が足りなかったから、

崩れてしまったのかもしれない」

 

そんな風に、原因を

外側の環境や不可抗力のせいにせず、

すべて「自分への矢印」として内側に向け、

自分を疑ってしまう。

 

 

そして、

「私の何が悪かったのか、

もう一度同じ場所で作って確かめてみよう」

という結論に至るのだ。

 

 

もう一度同じ条件でトライしてみて、

今度こそうまく構築できるか、

それともまた同じように消えてしまうのかを、

自分の身を挺して

実験しようとしているのではないか。

 

 

そう気づいた瞬間、私はベランダの蜂を

笑うことができなくなった。

 

 

なぜなら、これまでに私が

人生のあらゆる場面で繰り返してきた

「自滅のパターン」と、

この蜂の再建築の姿が、

見事に一致していたからだ。

 

 

人間、というか私は、

何か物事がうまくいかなくなったとき、

すぐに「自分の何が悪かったんだろう」

と自分を責めてしまう癖がある。

 

 

たとえば、理不尽な人間関係や、

自分を削ってまで尽くしてしまう

搾取の環境に身を置いて、

結果として心がボロボロに破壊されたとする。

 

 

客観的に見れば、それは単に

「その場所が最悪だっただけ」

「相手がとんでもない天敵だっただけ」

という、ただの不可抗力だ。

 

 

さっさと荷物をまとめて、

別の安全な場所に

引っ越せばいいだけの話である。

 

 

それなのに、

クソ真面目で不器用な私たちは、

更地になった絶望の壁の前に立ち尽くし、

わざわざ自分に矢印を向けてしまう。

 

 

「私がもっと気を遣っていれば、

壊されずに済んだのかもしれない」

 

「私の能力が足りなかったから、

こんな結果になってしまったのではないか」

 

そうやって過去の失敗の

答え合わせをするために、

無意識にわざわざ同じような

苦手な相手を選んだり、

同じような過酷な環境に

自ら飛び込んでいったりして、

 

「もう一度、同じ場所に巣を作って確かめる」

という不毛な再演を始めてしまうのだ。

 

 

「今度はうまくいくかもしれない」

「私がもっと完璧にやれば、

今度は壊されないはずだ」と、

上書きするためだけに、同じ場所で

何度も何度もぐるぐると回り続ける。

 

 

蜂の健気な第二期工事を見つめながら、

私は自分のこれまでの6年間や、

過去の失敗のループを思い出して、

苦笑いするししかたがなかった。

 

 

天敵に壊されただけなのに、

自分の不注意のせいにしてしまう。

 

 

場所が悪いだけなのに、

自分の技術不足のせいにしてしまう。

 

 

私の心が狭いだけだと、

思い込んでしまう。

 

 

自分に矢印を向けて反省することや

自分を疑うことは、人間関係を築いていく上で

持っていなければならない考え方だと

私は思っている。

 

 

けれど、度を越した自分責めは、

必要ないということも、散々経験してきた。

壊されたのは、こちらのせいじゃない。

 

 

そこにたまたま、容赦なく巣を壊してくる

人間という天敵が住んでいたからだ。

 

 

計画も、注意深さも、

何一つ間違っていなかったのだ。

 

 

ベランダで新しく

小さな土台を盛り上げ始めている蜂に向かって、

私は思っていた。

 

 

「きみの熱意はよく分かった。

でもね、ここは何度作っても、

私がまた壊しちゃう場所なんだよ。

だから、自分を疑うのはもうやめて、

次はもっと居心地の良い、誰も邪魔しに来ない

別のベランダに巣を作ってもいいんだよ」

 

 

それは同時に、何かあるたびに

「私が悪かったのかも」

と一人相撲を始めてしまう、

私自身への強いメッセージでもあった。

 

 

今ある景色の中で

自分の心地よさを

構築していく工夫は素晴らしい。

 

 

けれど、そもそも

天敵が常に目を光らせている場所に、

お気に入りのマイホームを

建てる必要はないのだ。

 

 

自分の不器用な行動の癖を

教えてくれた小さな建築士に、

深いリスペクトと

少しの申し訳なさを抱きながら、

私は今日も、あの蜂が

このベランダに戻ってこないことを願い

見守りながらこの文章を書いている。

 

 



 

 

 

 

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