父は家から少し離れた所にある店舗でお肉屋さんを経営していて、
母は家の一階の店舗で化粧品屋 を経営していた。
どちらも小さな町での客商売なので、
とにかく地域の皆さんとの信用が第一。
この信用を失えば死活問題やから、
「後ろ指刺されるような事」や
「悪い噂を立てられるような事」や
「争いの種になるような事」に関しては、
小さい頃から厳しいくらい注意されて、
そのような事を決して起こさないよう体に叩き込まれた。
地域との和を乱さないようにするために、
私は随分色んなことを我慢させられる子供時代を送った。
そんななか、
小2くらいのときだったか
私の中の重大事件が起こったのだ。
それは、
斜め向かいの食堂(家族ぐるみの付き合い)に
オカンと2人でお昼ご飯を食べに行った時のこと。
食べ終わったあと、
オカンと食堂のおばちゃんがいつものごとくぺちゃくちゃ長話を始めたので、
私は暇だったし店の奥にあるトイレを借りに行った。
トイレを終えて出てくると、
食堂のおばちゃんの一人息子であるW君が
風呂場から私を手招きしたのだ。
W君は中1で年は離れてるけど
昔から知ってる男の子で、
うちの兄も交えて一緒に遊んでもらったこともある。
当然W君にはなんの警戒もせず、
暇だし遊んで欲しいなとも思って
風呂場について行ったら…、
W君に急にお股と胸をサワサワと触られた。
意味が分からんかったけど何となく嫌な気持ちがして
壁を背に立ってたのを反対にクルっと壁側に向いたら…、
今度はお尻を触られた。
だんだんここに居たくない気持ちになってきた私は、
怖くなってきたのもあって無言で風呂場から逃げだした。
そのまま、
まだおばちゃんと喋っているオカンの所に走って行って、
オカンの腰にしがみついてエプロンをギュッと握りしめた。
オカンは依然として話に夢中である。
私は長話をさえぎって、
自分が今されたことを言いたくて言いたくて溜まらなかった。
けど、
それと同時に「言ったらそのあとどうなるか」も考えてしまっていた。
もし言ったとしたら…、
「子供のくせに
おしりとか、ないオッパイ触られたくらいで何言ってんの!って大人たちに笑われるかなぁ…」
「食堂のおばちゃん (W君のお母さん) の気を悪くすることをあの場で言ったらアカンやろ!と、後でオカンに怒られるかなぁ…」
「中学生の男の子やからそんなこともあるやろって軽く流されるかなぁ…」
いろんな事をシミュレーションして
結局言葉を飲み込んだ。
こういうことが、小さい頃から本当によくある。
自分の気持ちを後先考えずに無邪気に発する
ということが出来ない、
子供らしくない子供だった。
だから、
「大人しくて聞き分けも良いけど、なに考えてるか分からん子」
ってよく言われた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もう40歳を過ぎてるというのに、
今でもこのときの記憶が時々顔を出して、
「あのとき言えてたとしたら、
オカンはその場の空気を優先なんかせずに、
私のためにW君のお母さん (食堂のおばちゃん)と W君のことを怒ってくれたかなぁ。
そうだったら良いなぁ…。
そうだったら良いのになぁ…。」
って、
小2の時の私に戻って妄想して
自分を慰める時が今だにある。
