先日、3回目の読書会を開催しました。
今回は「朝井リョウ祭り」。
課題図書は『イン・ザ・メガチャーチ』、そして読める人は朝井リョウさんの他の作品も読んでくる、というゆるいルールです。
ここから先は『イン・ザ・メガチャーチ』のネタバレを含みます。
これから読もうと思っている方はご注意ください。
前回の読書会で扱ったのは、約20年前に書かれた本でした。
もちろん、時代を超えて読み継がれる作品もあります。
でも、その本には少しだけ「昔の空気」を感じました。
それに対して今回の『イン・ザ・メガチャーチ』は、まさに「旬の本」。
今の私たちがぼんやり感じていることや、
言葉にならなかった違和感を、そのまま小説という形にしてくれたような作品でした。
実は、朝井リョウさんの作品を読むのは今回が初めて。
読み終えて最初に思ったのは、
朝井リョウ、すごい!
そして、
めっちゃテクい。
です。笑
物語の構成ももちろんですが、
何より3人の登場人物の心理描写が本当に緻密です。
「私はこの人とは違う」と思いながら読んでいても、
ふとした瞬間に「あ、この気持ちは分かる」と立ち止まってしまう。
誰の中にも自分と重なる部分があるから、
人ごととして読めないのです。
この作品は、好き嫌いの評価がかなり分れているようですね。
私が耳にしたネガティブな感想は、
「読後感が悪い」
「怖い」
「トラウマになりそう」
というもの。
実際に推し活をしている方の中には、
自分の大切なコミュニティを批判されたように感じたり、
推し活にのめり込んでいく人の心理や、
それを仕掛ける側の戦略に恐怖を感じたりした人もいたようです。
それだけ読者の感情を揺さぶる作品を書ける朝井リョウさんって、本当にすごい!
この一冊で、私の朝井リョウファンダム入りが確定しました(笑)。
読後に朝井リョウさんのインタビューを拝見しました。
もともと「ファンダム」について書きたいと思っていたそうです。
物語を書き進めるうちに、ファンダムビジネスを仕掛ける側である
久保田という男性の「孤独」が、ここまで大きなテーマになるとは
思っていなかった、とも話されていました。
さらに、
「自分も友達がいないおじさん予備軍なんですよね」
みたいなを話していて、その言葉が妙に印象に残っています。
確かに、女性達はランチやお茶をしながら、
よくおしゃべりをしている印象があります。
私もボランティア活動で少し年上のお姉様たちと
ご一緒することがありますが、本当によく笑うし、話が尽きません。笑
でも、もちろん全員がそうではありません。
カウンセリングやコーチングでは、50代から60代くらいの女性から
「友達のつくり方が分からない」
「異性のパートナーではなく、同性の友達が欲しい」
というご相談をいただくことが少なくありません。
30代、40代は仕事や子育てで忙しく、
ママ友や職場の同僚との関係が生活の中心になりがちです。
でも、ママ友とは子どもの話、職場では仕事の話。
案外、自分自身のことを話せる相手は少ないものだったりします。
特に用事があるわけではないけれど、お茶を飲みながらたわいもない話をしたい。
オチなんてないけれど、「ちょっと聞いてよ」と話せる相手がいる。
そんな関係って、意外と貴重なのだと思います。
そして、この問題は年齢を重ねても終わりません。
母を見ていると、それをよく感じます。
病気をきっかけに会えなくなった。
友人が施設に入った。
伴侶を亡くしたのを機に、子どもの家族と暮らすことになった。
そんな理由で、少しずつ友人とのつながりが減っていく。
「お友達が少なくなったなぁ」
そんな言葉を聞く機会が増えました。
友達が欲しい。
話し相手が欲しい。
これは性別や年齢を問わず、人生で何度か向き合うテーマなのかもしれませんね。
『イン・ザ・メガチャーチ』の登場人物たちは、
居場所や人とのつながりを求めながら、少しずつ狂っていきます。
分断が進む社会の中で、
「孤独を埋めたい」「誰かとつながっていたい」という、
誰の中にもある欲求が、とても巧妙に描かれていました。
私が一番気になった人物は、久保田です。
仕事中心で生きてきて、離婚後、一人暮らしをしている久保田。
「今まで家族や同僚とのコミュニケーションを避けてきたツケが回ってきた」
と感じています。
しかも、若い男性に「友達がいない」という事実を突きつけられ、
自分の中にあった孤独感や無価値感があらわになっていく。
そして最後は、暴走して、超えてはいけない一線を越えてしまいます。
そんな久保田に、一緒に働いている橋本が問いかけます。
「物語に飲み込まれて、暴走するのって、
やっぱり楽しいものなんですか」
久保田は、他のことで頭がいっぱいでその質問には答えないのですが、
もし答えていたら何と言ったのだろう、と想像してしまいます。
ちなみに私は、今のところ推しはいません。
ずいぶん昔、友人と一緒に歌舞伎町のホストクラブを何軒かハシゴしたことがありました。
ホストクラブをあまり楽しめなかったので
「私は、ホストにはハマる気がしないなぁ」
と話したら、ゲイバーのお姉様にこう言われました。
「そういう人ほどねぇ、
これ!っていう人に出会うとハマっちゃうもんなのよぉ」
なるほど。
きっと、そういうものなのでしょう。
私はまだ、沼る相手に出会っていないだけなのかもしれません。




