最近、コーチングと対比する概念として
「エフェクチュエーション」
を紹介している方を見かけました。
気になって手に取ったのが
『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』
という本です。
帯にある「日本初の入門書!」という言葉どおり、
とても読みやすく、分かりやすい一冊でした。
ひとつひとつの原則自体は、どこかで聞いたことのあるような内容ですが、
それらが「予測が難しい状況における意思決定と行動のロジック」
として整理されている点が新しいのだと思います。
そして、この本そのものが、エフェクチュエーションを体現しているな…!
と感じたのも印象的でした。
エフェクチュエーションとは何か(ざっくり)
エフェクチュエーションを一言で表すなら、
「手元にあるものから出発して、結果を出す思考&行動法」
です。
従来のビジネスや目標達成の考え方(コーゼーション)が、
「ゴールを決めて、そこから逆算して計画を立てる」
だとすると、
エフェクチュエーションは、
「自分が何者で、何を知っていて、誰とつながっているか」
といった“今あるリソース”からスタートし、
行動しながら未来を形づくっていきます。
私自身の感覚と重なったところ
実は私はこれまで、いわゆる「目標設定→達成」という
コーチング的なアプローチに、どこか苦手意識がありました。
もちろん、それが有効に機能するケースもたくさん見てきましたし、
実践してうまくハマることもよくあります。
ただ、「最初にゴールを明確にする」ということに、
少し窮屈さを感じることがあったのです。
そんな中でエフェクチュエーションに出会い、
「ああ、私はこれに近い動き方をしてきたのかもしれないな」
と感じました。
これまでを振り返ると、
* できることや興味のあることから始めてみる
* 人とのつながりの中で機会が広がる
* やってみた結果、当初は想像していなかった方向に進む
そんなプロセスを、自然と繰り返してきたように思います。
これが、エフェクチュエーションの全てではありませんが、
「すでにやってきたことを、新たな視点で言語化してもらった」
ような感覚がありました。
コーチングとの違いと共通点
コーチングは一般的に、
「目標を設定し、そこに向かって行動していく」
というプロセスを大切にします。
一方でエフェクチュエーションは、
「まず動く。その中で目標自体も変化・創造されていく」
というスタンスです。
こう書くと対極のようにも見えますが、
実際にはどちらが良い・悪いではなく、
“状況に応じた使い分け”なのだと思います。
(ちなみに、本書の中では対極の方法論として
コーチングではなく「コーゼーション(因果論)」
という表現が使われています。)
たとえば、
* ゴールが明確で、そこまでの道筋もある程度見えているとき
→ コーチング的アプローチ
* 何ができるかも、どこに向かうかもまだ曖昧なとき
→ エフェクチュエーション的アプローチ
というように。
「やりたいことが複数ある」ときのヒント
個人的に面白いと思ったのは、
「あれもやりたい、これもやりたい」という場面への応用です。
複数のやりたいことがある人は、時に
「あれをやると、こっちができなくなるかも」
といった矛盾を抱えていることがあります。
そういう時、行動に移すための対策としてよくあるのが
目標の優先順位づけをしてどれか一つ選び、他を一旦手放すことで行動する、
という方法があります。
でもエフェクチュエーション的に考えると、
* 今持っているリソースで、どれなら小さく始められるか
* 誰と関われば、新しい可能性が生まれるか
* やってみた結果、どの方向が自然に広がっていくか
といった視点で、複数の可能性を同時に扱いながら進むことができます。
「選ぶ」ではなく、「試しながら見つけていく」という感じです。
これは、何ができるのかを探りながら進みたい人にとっては、
とても心強い考え方だと思いました。
ティール組織との相性の良さ
もうひとつ興味深かったのは、いわゆる「ティール組織」との親和性です。
ティール組織では、
* 予測やコントロールよりも「進化に委ねる」こと
* 個々のメンバーが意思決定を行う「セルフマネジメント」
* 自分らしさを持ち込む「ホールネス(全体性)」
といった要素が重視されます。
これらは、エフェクチュエーションの考え方ととてもよく重なります。
特にセルフマネジメントにおいては、
「自分は誰で、何を知っていて、どんなリソースを持っているのか」
から出発するエフェクチュエーションは、
実践的な行動指針になるのではないでしょうか。
また、ホールネスという土壌があることで、
個人のリソースがより活かされやすくなるとも感じます。
そう考えると、ティール組織の中で動く人たちにとって、
エフェクチュエーションは“自然な行動原理”なのかもしれませんね。
コーチとしてどう活かせるか
ここまで読んで、「じゃあコーチングはいらないの?」
と思う方もいるかもしれません。
エフェクチュエーション的なプロセスの中でも、
* 自分が本当に大切にしたいことは何か
* 今、どんな選択をしているのか
* 行動の中から何に気づいているのか
こうした問いを扱う場として、コーチングはとても有効だと思います。
つまり、
方向を定めるとき、深めるとき → コーチング
動きながら創っていくとき → エフェクチュエーション
そんなふうに、補完関係として捉え、
場面によって使い分けると可能性が広がるのではないでしょうか。
おわりに
未来が予測しにくい時代、とよく言われますが、
だからこそ「どう計画するか」だけでなく、
「どう動きながら創っていくか」という視点も
大切になってきているのかもしれません。
コーチングも、エフェクチュエーションも、
どちらも「よりよく生きる・働く」ための道具のひとつ。
その時々の自分やクライアントの状態に合わせて、
しなやかに使い分けていけたらいいですね。


