手を撫でるだけで

何万回の「愛してる」よりも

心を甘く満たしてくれる。

 

はらぺこくんの不思議な手。

 

そういえば、こんなCMソングがあった。

 

♪ママの手は 何でもできちゃう 不思議な手

 ママ、ママ

 ママの手は 魔法の手~♪

 

恋人なのに

こんな歌を連想するなんて、おかしいな。

 

子どもにとって、ママの手は

触れられると、この上なく安心できて

甘やかにこそばゆい。

 

わたしの気持ちも似ているんだろう。

 

 

********

 

日を開けずに、次に会う約束ができた。

元のペースに戻ったように。

 

「今度は、はらぺこくんの

 行きたいところに連れてって」

とお願いしたら、

競艇を見に行くことになった。

 

 

 

競馬は何度か行ったことあるけど

競艇は初めて。

 

はらぺこくんは

安全第一の人なので

賭け事にはほとんど興味がないのだけど

競艇は、たまにふらっと一人で出かけて

1回100円で何レースか賭けることがあるらしい。

 

「水しぶきと

 モーター音とエンジンのにおい、

 あとアジフライかな。」

 

アジフライ?

どうやら競艇場にはアジフライがあるらしく

はらぺこくんはそれをかじりながら

見るのが好きなんだそうだ。

 

********

 

日程の都合で、

今回は、はらぺこくんも初めて行く

競艇場になった。

 

 

初めてリアルで見るボートレースも

面白かったのだけど

なによりも、競艇場の空気が独特なのだった。

 

競馬とは全然ちがう。

 

おじさん、おじいさん、オッサン、オッチャン・・・

どこを見てもシニア男性ばかり。

しかも、活気あふれるという感じではなく

どこかうら寂しい。

NHKのドキュメンタリー72時間みたいな風景。

伝わるだろうか。

 

競馬場は、家族連れや女の人も多く

健康なエンタメ感があるのに。

時代に置き去りにされた感がすごい。(失礼・・・)

 

「引退した男の人って

 ここにいたんだね。

 女の人は、よく集まって

 お茶とかしてるけど。

 男の人はどこに行ってるのかと思ったら。」

 

「どっか出かけるって言ったら

 こういうとこなんだろうね。」

 

「でもさ

 女の人はグループで集まるけど

 おじさんたち、みんなソロだね!」

 

競艇場に集まるおじさんたちは

みな静かで、ひとりで淡々と行動している。

 

念願の売店で

アジフライをゲットする。

↓ (写真はネットからお借りしてます)

 

もつ煮、焼き鳥、チューハイ、ビール。

おじさんがこよなく愛するものだけが

ミニマムに提供されている。

お値段も、ミニマムだ。

このご時勢に、心に沁みる。

 

「映えるモノが、なにひとつない!!

 それが、一周回って・・」

 

「笑 一周回った感あるね」

 

 (同じく、お写真はお借りしてます)
 
アジフライが
インスタにいっぱい載っちゃう時が
来るかもしれない。
でも、おじさんたちの憩いの場、
どうか、このままであってほしい。
 
そんな競艇場に
ふらっと来るというはらぺこくん。
彼がここの空気を愛するのがよくわかる。
 
そういう背中が
一周回って色っぽいのである。
 
レースのほうは、4レースぶんくらい
賭けたのだけど
1円も当たらなかった。
わたしも、はらぺこくんも。
各自1000円ー2000円くらいの損。
 
ほんとは100円くらい当たりたかったけど
競艇新聞をいっしょに眺めて
次、誰にする?と話したり、
しぶきを飛ばすボートに一喜一憂するのは
すごく楽しかった。
 
 
******
 
すっかり、競艇レポートになってしまいました💦
 
そんなわけで
わたしにも、
はらぺこ直伝の「なあなあ力」が
かなり、ついてしまった。
 
 
帰りの電車が
今回も空いていたので
ふたりでピトっとくっついて座った。
 
手の甲、手のひら、手首
はらぺこくんの魔法の手が
わたしの手をなでなでする。
 
わたしが逆らわないのを察知して
その手は、腰やお尻に、じわっと触れて
また引っ込む。
 
「あ、触っちゃった!」
と、恥ずかしそうに笑う。
 
出た。
はらぺこの「ちゃった」。
 
ふふふ、と、ほほ笑むわたし。
イヤじゃない、というしるし。
 
「なんか、くっつきたくなるね。」
 
「うん」
 
「でもさ
 また、なあなあにしようとしてるでしょ?」
 
「え・・・」
 
「なんとなく、元通り~みたいな?」
 
苦笑する、はらぺこ。
 
「いや、でも、気にしてるよ。
 それでいいのかな、って。」
 
「Hしちゃったら・・・」
 
「うん。
 また離れづらくなっちゃうってなるでしょ?」
 
「そうだね。
 なっちゃうだろうね!」
 
「だから、触ったりするのも
 いいのかなぁ?って」
 
そうだ!
大いに悩んでくれ!
 
でも、やっぱり
この「触ってくる手」がないと物足りない。
 
わたしたちは、すごく動物なんだろう。
 
 
ふと
「〇〇に行くの、どうするー?」
と、はらぺこくん。
 
〇〇は、わたしが行きたいと言った場所。
今までのわたしたちの移動距離を更新する。
ギリギリ日帰りできる限界。
 
「行ける?!」
 
「うん、行けるよ。
 朝はやく出ればいいよね。」

 

 

「一緒にやりたいことが浮かばなければ

 会う必要がない」

と言ったわたしの言葉を

彼なりに、受け止めてくれたんだろう。

 

はらぺこくんのような人には

「一緒にいる」こと、

そのもので十分なのかもしれない。

 

でも、わたしたちには

「ただ一緒にいる」空間がない。

 

と、わたしは感じる。

 

彼にしてみたら

あらゆる場所が、その空間なのかもしれないが。

 

でも、今は

あまりそのことに不満を感じない。

 

 

上野千鶴子が書いていた。

「セックスは、きわめて侵襲性の高い

 個人的な行為です」

だったかな。

 

「侵襲性の高い」

 

心身ともに、内部へ深く入り込み

影響を与える

ということだろう。

 

ママの手のような

はらぺこくんの手に

もっと身をゆだねながらも

わたしは、自分の人生の舵を

自分で望むように取っていけるのか。

 

また、こうも思う。

 

しないことも選べるのに

することを選ぶということは?

 

それを選ぶことでしか

味わえない感覚がある、と

考えるからだろう。

 

ならば、味わってみるしかない。

 

 

お読みくださり、ありがとうございました。

 

(おしまい)