一緒にやりたいことが浮かばないなら

会う必要はない

 

上野公園のお花見に

惰性でやってきた風のはらぺこに

言い放ったのだけれど

 

ふと、また

やりたいことのイメージが浮かんできたのは

2-3週間経ったとき。

 

運動?散歩?

体を動かすイメージ。

話し合いなんか、しなくていい。

 

去年の夏も、こんな時期があった。

しばらく離れて

でも、突如いっしょに泳ぎたくなり

市民プールへ行ったんだった。

 

わたしがチャットで声をかけると

はらぺこくんは、忠犬のよう。

わたしが行きたい場所へ、

行きたい日時に来てくれる。

 

わん!

待ってましたわん!

はらぺこ犬😊

 

だったら、自分から誘ってくれればいいのに。

でも、彼はいつもこう。

ただじっと待っていてくれる。

そういう愛のカタチなんだろう。

 

********

 

「いっぱい歩くよっ!」

 

「え、なんで?」

 

「運動になるから!」

 

わたしの家から数キロの

庭園に行くことにした。

ウォーキングにちょうどいい。

 

はらぺこくんは、持病の治療の副作用で

ちょっとふくよかになった。

わたしも、ロコモーティブシンドローム対策。

お金もかからないし、

アラフィフには一石二鳥だ。

 

上野公園は、わたしも反省していた。

里山の動物のように、平穏を愛するはらぺこ。

人混みに連れて行っちゃダメなのだ。

 

今度の庭園は知る人ぞ知る、だから

道中も庭園の中も、がらがらだった。

 

いつの間にか手をつなぎ、

あちこち、ぶらぶら見て歩く。

木の小橋を渡り、苔むした石仏を眺める。

 

小さな売店でお菓子を買った。

庭園オリジナルのものがあったので。

 

小ぢんまりした広場でベンチに座って

1つずつ食べる。

人影まばらな庭園に、緑色の風が匂っていた。

 

「さて

 はらぺこくんは会わない間

 どんなことがありましたか~?」

 

「んー なにもないよ。

 いつもどおり。」

 

「えー、なんかあるでしょ?」

 

会話がほとんど思い出せない。

あまり意味のあることを話さなかったんだろう。

言葉じゃないものを、やりとりしていた。

 

********

 

その日は、たくさんたくさん歩いて

出発地と違う駅に着き、

電車に乗って移動して、ラーメンを食べた。

 

はらぺこくんが学生時代に通ったという

ラーメン屋さん。

おいしいけど食べきれなくて、

残った麺をはらぺこくんに食べてもらった。

 

「普通の人だったら

 絶対、こういうことしないんだよ。」

 

「食べ残しを食べるとか?」

 

「うん。

 回して食べるとかも、やなんだ。」

 

はらぺこくんにしてはめずらしく

力説しているな。

かっぱさんは特別だ、と言っているのか?

いや待て。

そうじゃなくて・・・

 

「あ、もしかして今

 断りづらかった?!」

 

「いや、そうじゃないよ。」

 

真意はわからないけど。

 

 

帰りの電車は空いていて

ピトっとくっついて座った。

 

なんにも話さなかったけど

はらぺこくんの手は、いつもどおり雄弁だった。

わたしの手を握ったまま、

愛おしそうに、すりすりする。

スベスベマンジュウガニのような、はらぺこくんの手。

その感触を味わいながら

わたしは目を閉じて、彼の肩に頭を預けた。

 

ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン・・・

 

車窓に映るわたしたちの向こうに

東京の夕暮れが広がっていた。

 

(つづく)