朝日が邑を照らしている。
稲刈りが終わった田んぼ。
一つの終わりが寂しさを感じさせる。
しかし、それは…
新たな時に向けての休息でもある。
壱与は、三諸山に祈りを捧げる。
それが日課の一つでもある。
その帰り…
「綾人との約束を果たさないと…」
目の前の田んぼを見てそう思った。
「真魚も嵐も朝からいないし…」
「皆で行くって言ってたのに…」
壱与の心が、巴御前に寄り添っている。
「あれっ?」
邑の入り口付近…
二人の姿を見つける。
浅葱と綾人…
「あの二人…」
壱与がある事に気付いた。
「あんたって浮き沈みが激しい人だね…」
落ち込んでいる綾人に浅葱が言う。
「それが性分なんだから仕方ないよ…」
綾人がうつむいている。
「私が武術教えてあげようか?」
浅葱に悪気はない。
しかし…
その言葉すらも綾人の心を剔る。
「それは…」
綾人にも男としての自尊心がある。
女の浅葱に教えてもらう。
それが…
心の何処かで拒んでいる。
「綾人…」
「あんたって弱いくせに…」
浅葱がそこまで言いかけて止めた。
うつむいていた綾人が顔を上げる。
一瞬、二人の視線が重なる。
「あっ…」
浅葱が空にその視線を向けた。
「弱いのは分かっている…」
認めたくない事実。
しかし、綾人は…
苦しさの本当の理由に気付いていない。
「弱いくせに、私を庇ったよね…」
浅葱がそう言って、綾人を見た。
「えっ…」
浅葱の言葉でそれを思い出した。
綾人が忘れていた事実。
「うれしかったよ…私…」
「私にも守ろうとしてくれる人がいる…」
浅葱の言葉が、綾人の心に染みこんでいく。
綾人の心の中で、混じり合う。
浅葱の心と自らの心…
「そうなんだ…」
「浅葱を…守れなかったんだ…」
「だから…」
綾人は空を見た。
「弱くてもいい…」
「その時に動ける…」
「その方が先じゃない?」
浅葱は、その空に向かってそう言った。
次回へ続く…
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