後鬼は老師の言葉を受け止められなかった。
「あのような者達が、小角様と関わりがある…」
後鬼にはその事実が信じられない。
「小角様にとって最後の切り札…」
「それを使う事はないと思っていたはずじゃ…」
老師が、小角の意志を伝えている。
「最後の…切り札…」
「それが裏側だというのか…」
前鬼が、知識の灯りを見つめている。
前鬼の中に眠る膨大な知識。
その光の中に答えがある。
「まさか…四鬼一族か…」
前鬼がつぶやいた。
「そうじゃ…」
老師が頷いた。
「そうじゃったのか…」
「小角様が…」
「あの者どもに託したものは…」
後鬼が、真実に触れている。
「人の正しさは危うい…」
「小角様はそれを嘆いておった…」
老師の言いたいことは後鬼にも分かる。
小角自身、あらぬ嫌疑で島流しにされた。
後鬼は、その小角の心を良く知っている。
「もし…人々が道を誤ったなら…」
「その時は…」
「闇をもって…」
老師はそこまで言いかけて止めた。
「それが、奴等の考えなのか…」
「奴等は、その時を今だと考えておるのか…」
後鬼が唇を噛みしめる。
「確かに…」
「考えようによってはそう見える…」
「だが、人々には罪はない…」
前鬼は、貴族達の行いを良しとは見ていない。
「紅牙、悪いがあれを…」
「はい…」
老師の指示で、紅牙が大きな箱を持って来た。
漆を施された美しい箱。
「これを知る者は儂らだけじゃ…」
老師がその蓋を開けた。
「なんと!」
前鬼はその波動に震えを覚えた。
「こ、これは!」
気がつくと…
後鬼の瞳から、涙が落ちていた。
次回へ続く…
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