「浅葱、下がって!」
突然、綾人が前に出た。
「お主には用はない!」
蜻蛉が錫杖を振った。
「綾人!」
浅葱が名前を呼んだ時、綾人は地面に倒れていた。
「次は浅葱の番だ…」
山蝉が笑みを浮かべる。
「気易く人の名を呼ぶな、汚らわしい…」
浅葱が山蝉を睨む。
「その気の強さがたまらぬ…」
山蝉が、笑みを浮かべながら近づいてくる。
「悪く思うな、恨むなら父親を恨め…」
そう言いながら蜻蛉が後ろに回り込む。
「どうして、父さんが!」
浅葱が、蜻蛉の言葉に気を取られた。
「うっ!」
山蝉の錫杖が浅葱の脇腹に食い込む。
うずくまる浅葱を、山蝉が羽交い締めにした。
今度は蜻蛉の錫杖が浅葱に向かう。
「!」
浅葱はあっという間に気を失った。
「残りは後のお楽しみだ…」
山蝉が笑みを浮かべながら手足を縛り、口に紐を掛ける。
そして…
大きな身体の浅葱を軽々と抱え上げ、その場を去った。
あっという間の出来事。
地面には、浅葱の籠と…
気を失った綾人だけが残されていた。
「おい、真魚!」
嵐が先に気付いた。
「奴等か…」
真魚がすぐに表に出た。
だが姿は見えない。
「何しに来たのだ…」
嵐が離れていく波動を感じとっている。
「あれは!」
真魚が綾人を見つけ走り出す。
「おい、綾人!」
真魚は綾人を揺すり起こす。
「う…」
綾人が苦しそうに目を開けた。
「何があった…」
真魚が綾人に聞く。
「あっ!」
綾人がすぐに身を起こした。
周りを見渡してその姿を探す。
「浅葱が…いない…」
「妙な格好をした二人組の男に!」
綾人は真魚に状況を説明した。
「やはり…そう来たか…」
「だが、女一人を抱えてそう遠くには行けまい…」
真魚が笑みを浮かべて言った。
「嵐、行くぞ!」
真魚がそう言うと、突風が吹いた。
綾人は思わず目を瞑った。
再び目を開いた時…
目の前に金と銀に耀く、美しい獣がいた。
「これが…嵐様…」
綾人が驚いている。
「本当に神様だったんだ…」
真魚と嵐はあっという間に消えた。
残された神々しい獣の波動に…
綾人は、心を奪われていた。
次回へ続く…
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