「この辺りでどうだ…」
真魚が皆を止めた。
森に光が射しこんでいる。
一本の大木が倒れていた。
真魚がその上に、後鬼の煙玉を置いた。
そして、手に持っている棒に擦りつけた。
すると、煙玉に火が付いた。
「わぁ…」
昴が思わず声を上げた。
「七色…本当だったのだな…」
阿瑠が、それを見て感心している。
七色の煙が、渦を巻くように天に昇っていく。
深緑の底から、龍が天に向かうようにも見える。
「虹の煙みたい…」
舞衣もそれを見て驚いている。
それは、皆が初めて見る光景であった。
「奴は…暇なのか…」
嵐だけが、それを見て呆れていた。
「天に昇る七色の龍…」
「虹龍玉とでも名付けるか…」
真魚も笑っていた。
「 火吟 様、あれを!」
深い森の隙間から、それが見えた。
「これは…」
「どういうつもりだ…」
火吟と呼ばれる男が言った。
七色の煙。
当然、自然の煙では無い。
「罠か…」
普通はそう考える。
既に、沢山の仲間が消えている。
そこにいる者達の緊張が伝わって来る。
「行くしかないだろう…」
義沙 が、笑みを浮かべて言った。
「正気か?」
火吟は何かを畏れている。
その畏れこそが、闇を引き寄せる。
「どのみち俺達に、勝ち目は無い…」
義沙がそう言って、皆を見た。
覚悟はしておけ…
そういう意味だ。
「お主…何かを知っておるのか?」
火吟が、義沙に疑いを向ける。
「知っていれば…裏をかく…」
義沙はそういう男だ。
「知らぬから言っておるのだ…」
「裏も表も全くわからぬ…」
義沙は両手を広げた。
「お主が先頭を行け…」
火吟が義沙に言った。
「俺もそのつもりだ…」
義沙が、笑みを浮かべて答えた。
「疑うのも…無理はない…」
「この話は、俺が持ち込んだものだ…」
「だが、違うのだ…」
義沙がそう言って歩き始めた。
「違うとは…どういうことだ…」
その後ろに、火吟が続いた。
「何も…かもだ…」
義沙は笑っている。
自らの破滅を楽しんでいる。
そうとしか見えない。
「俺がいない間に、全てが変わった…」
「今は、それしか考えられない…」
義沙は歩きながら喋った。
「その答えが、あそこにあるのか…」
火吟がつぶやいた。
この森の先に、全ての答えがある。
煙がその方向を示している。
今の義沙に畏れは無い。
むしろ楽しんでいる。
心が躍っている。
「そういうことだ…」
破滅に向かう自分を楽しんでいる。
義沙はそういう男であった。
「気配は五つ…」
昴がそれを捉えていた。
「潔いではないか…」
真魚が笑みを浮かべた。
その気配は、真っ直ぐに近づいてくる。
真魚もそれを捉えている。
「相手は俺だ…」
「あきらめが肝心じゃ…」
嵐がその方向を見ている。
「もうすぐよ…」
昴が言った。
阿瑠に緊張が奔る。
がさっ!
落ち葉を乱す、かすかな音。
「来たわよ…」
昴の声と同時に、木の後ろから顔が覗いた。
「あれは…」
舞衣が驚いている。
「義沙!」
昴が、その男の名を呼んだ。
「駒が揃った…と言うわけか…」
義沙と呼ばれた男が、昴を見ていた。
「ほう…」
真魚が笑みを浮かべていた。
続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-