桃尾山。
その頂上に真魚と嵐、そして、慧鎮がいた。
明慧は、寺で留守を守っている。
明慧の近くには、前鬼と後鬼もいるはずだ。
太陽が南にある。
木漏れ日が、巨石を照らしている。
真魚がその石を見ている。
手を当て、何かを探っている。

「この辺りか…」
鬼の角のような巨石。
真魚の背丈の倍ほどもある。
その根元の辺りを、真魚は手で探っていた。
「まさか、その岩の中に目当てのものがあるのか」
嵐が、真魚の行動を冷やかしている。
「不自然なのだ…」
真魚がそう言った。
「確かに佐伯様の言う事にも、一理あるが…」
慧鎮が、自分の考えを伝えた。
不自然ではあるが、人がどうこう出来る大きさではない。
慧鎮はそう言いたいらしい。
「天の智慧が古の都を照らす時…
閉ざされた光が…
全てを導くであろう…」
真魚が、その謎を解いている。
「天の智慧は太陽の光だ」
「そして、古の都の位置は南側にある…」
真魚が笑って嵐を見た。
「では、閉ざされた光とは何だ?」
嵐がそう言った。
慧鎮が先に、真魚の視線に気付いていた。
「祠…か…」
慧鎮がつぶやいた。
「だが、祠の中に祀られてあったものは…」
「盗まれて…」
真魚が懐から何かを出した。
「盗まれたものは、関係ない…」
真魚が、それを慧鎮に見せた。
「鏡…確かにそう伝えられている」
慧鎮が真魚にその事実を告げた。
「そうだ、何があったかが問題なのだ…」
真魚がそう言いながら、祠の扉を開いた。
中を覗き込んでいる。
真魚は少し考えた。
そして、祠の前の小さな岩に目を付けた。
光がその岩を照らしている。
その岩の上に鏡を置き、様々な方向を試していた。
「思った通りだ…」
そして、光の反射する先を決めた。
真魚が探っていた岩を、鏡の光が差していた。
「む、無理矢理ではないのか…」
嵐が疑っている。
「いや…そうかもしれない…」
慧鎮が真魚の考えに頷いていた。
「その岩の中に、どうやって入れるのだ」
嵐が真魚にその事実を確認している。
「お主には出来ぬのか?」
真魚が嵐に言った。
「俺は、神だぞ!出来ぬことなぞない!」
嵐がいつものように答えた。
「そう言うことだろう…」
真魚がそう言った。
「まさか…」
慧鎮が驚いていた。
「下がってろ…」
真魚がそう言って棒を構えた。
その波動が大気を揺らしている。
細かい振動が皮膚をくすぐる。
はっ!
真魚が棒を横に振った。
どおぉおん!
巨石が、根本で折れた。
その勢いで、斜面を転がって止まった。
岩の中には小さな空間があった。
その中に黒い箱が見えた。
手の平二つ分。
それほど大きくはない。
「これは…まさか…」
慧鎮は驚いていた。
それがあったことにではない。
これは、真魚にしか出来ない。
真魚が来ることを、予言したとしか思えない。
その事実に、慧鎮が驚いていたのであった。
真魚が箱を取り、蓋を開けた。
中には炭が敷き詰められていた。
「闇の中の光か…」
真魚は笑みを浮かべ、そこにある巻物を取った。
手の平ほどの小さな巻物。
それを開くと文字が並んでいた。
「これは、天竺の文字…」
慧鎮がそれを見て言った。
だが、慧鎮には何のことだか分からない。
行基の考えは分からなかった。
慧鎮が分からぬものは、他の者にも分からない。
「なるほど…そう言うことか…」
真魚だけが、笑みを浮かべていた。
「お主のそういう顔は久しぶりだのう…」
その顔を見て、嵐が呆れていた。
「これは…なんでしょう?」
慧鎮が恐る恐る真魚に聞いた。
「この世の理だ…」
真魚が笑って、そう言った。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-