弦と千潮が、砂浜を走ってきた。
怪我をした九を見つけた。
「良く見ると、可愛い顔しているのね」
千潮が九を見て微笑んだ。
「考えて見れば、こんなに近くで見るのは初めてだな…」
弦も漁をしている九しか、見たことはなかった。

那海が二人の様子を見て言った。
「弦と千潮って変わったね…」
「千潮は変わったけど…俺は…」
「弦も変わったわよ!」
「これは、どうも、ごちそうさま」
譲り合う二人に、見ていた那海が照れた。
その言葉で、二人の顔が朱くなった。
「人と動物の魂って、どう違うのかな…」
突然、弦が話をすり替えた。
照れ隠しなのか、九の怪我からそう思ったか…
それは、分からない。
「ほら、難しいことを考えている」
那海が、弦の言葉を茶化している。
「生命の量と言うことになるな…」
真魚が、その質問に答えた。
「砂粒一つが草だとしたら、手の平一杯の砂が人だ」
真魚は砂を手で掬って見せた。
「神はこの砂浜全部だ…」
事実とは違う。
だが、真魚は皆にわかる様にそう説明した。
「え~これが全部…」
砂浜を見渡して、那海は驚いていた。
「こんなものでは無いぞ…」
嵐がつぶやいた。
「そうなの?」
那海が真魚を見た。
「まあ、そうだな…」
真魚が、笑っている。
「それじゃぁ、手の平の砂が人だとしたら…」
「人の魂は…神の一部ってこと…」
弦がその事に気がついた。
「そう言うことになるな…」
真魚が、弦の変化を受け入れていた。
「ふ~ん」」
「こうやって例えると、不思議と分かったような気がする…」
那海が砂を手の平で滑らせた。
ちぃりぃりぃ~ん
突然、真魚の鈴が鳴った。
「どうやら、当たりのようだな…」
真魚の考えが、正解だった合図だ。
ちぃりちぃり~ん
二度目が鳴った。
今度は少し音が違う。
「これは…」
真魚が考えている。
「珍しいのう…何の合図じゃ?」
嵐が鈴の音を気にしていた。
二回目が鳴ることはほとんど無い。
「何かが迫っている…」
真魚が、そう言って意識を広げた。
「どういうこと…」
那海が緊張している。
「嵐!」
真魚が叫んだと同時に、嵐が霊力を解放した。
その霊力が大気を押し、砂を巻き上げる。
「何なの!」
那海は、砂煙から目を守っていた。
その中から現れた、嵐の姿に驚いた。
神々しい光を放つ、金と銀の縞模様。
那海は、その姿を初めて見る。
「あっちだ!」
真魚が飛び乗ると、嵐の姿が消えた。
「あれって…」
那海が口を開けたままだ。
「嵐の本当の姿…」
千潮が笑ってそう言った。
「本当に神様だったんだ…」
この姿を見るまでは、誰でもそう思うだろう。
子犬が神だとは誰も思わない。
だが、これで那海も疑うことはない。
「でも、あっちは…漁をしているはず…」
真魚と嵐の残した波動。
その方向が、那海は気になっていた。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-