真魚達は奏と響の家に行く為に、話し合っていた。
響の居場所を作るためだ。
響の心は複雑であった。
自らの家に笑って帰ることが出来ない。
それは悲しいことだ。
「村人に見つかる訳にもいくまい…」
「それに家の場所も問題だな…」
真魚が奏と響に向かって言った。

「廻りに他の家がないかと言うこと?」
奏が真魚に聞いた。
「恐らく奏の母が、悲鳴を上げる…」
真魚が笑って言う。
「鬼は怖いからのう…」
嵐が前鬼と後鬼をからかう。
「何を言っておる!昔はこの美貌で男共を骨抜きにしたものよ…」
「のう、爺さん?」
後鬼が前鬼に視線を送る。
「そ、そうじゃったかのう…」
前鬼が返事に困っている。
骨抜きにされた一人のうちということだろうか…
「本当か?」
嵐が疑っている。
「稜、確認しておきたいことがある…」
「なんですか…」
突然の真魚の問いかけに、稜は緊張していた。
真魚の事はよく知らない。
だが、理由はそれ以外にもあった。
「あれっ、稜ってそんなに人見知りだった?」
その様子を奏に笑われた。
「私なんか、斧を担いでいる所を見られたのよ!真魚に!」
「恥ずかしい…」
「奏らしい…」
今度は奏の事を響が笑った。
「響が笑うのはおかしいでしょ!」
「あなたを助けるために必死だったのよ!」
笑う響を奏が窘めた。
「考えれば、まだ半日も経ってないのよね…」
奏が真魚達を見ている。
「そうだよね…」
響が笑みを浮かべる。
「時間って、本当はないのかも…」
奏がまた何かを見つけた。
「心には…ないかもね…」
響がそう感じていた。
「ね、稜?」
奏が稜を見て微笑んだ。
「そうかも…知れない…」
奏と響が心を許している。
その事実が稜を安心させていた。
その時であった。
「!」
突然! 獣の叫び声が聞こえた。
同時に伝わる怪しげな波動。
「真魚殿…これは…」
前鬼がそれに気づいた。
「獣ではないな…」
真魚が言った。
「何なの…これ…」
奏がそれを感じ取ったようだ。
「何だか…重い…苦しんでいるような…」
響にはそう感じたようだ。
「神社の方角か…」
後鬼はそのものを一度感じている。
「真魚殿、これはうちが感じたものと同じ…」
後鬼は真魚にその事実を告げた。
「稜!」
真魚が話を元に戻した。
「家族に消えた者がいるか?」
真魚の言った言葉は稜には衝撃であった。
「どうして…分かるの…」
稜は心底、真魚が恐ろしいと感じた。
全てを知っている。
稜が最初から畏れていたのはこれだ。
真魚が放つ波動。
稜はそれをそう読み取った。
稜が隠しておきたかった事実。
真魚は既にその事に気づいていた。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-