紗那は後ろから東子を抱きしめている。
「行くぞ!」
嵐は更に高みに登った。
「えっ」
早い。
この世の乗り物はどれも追いつけない。
それでも全力ではない。

「これぐらいでよいか…」
嵐がそう言って止まった。
大地と宇宙の境目。
その辺りであろうか。
嵐の霊力で守られていなければ、命はない。
「嵐からの贈り物だ…」
東子の耳元で紗那が言った。
「これが…大地…」
輝く大地。
直ぐそばに丸い月が見える。
「月がこんなに…」
東子は驚いている。
背中に伝わる紗那の温もり。
東子の心に溢れる想い。
「東子、目を閉じて俺を感じろ…」
紗那がそう言って抱きしめたまま紗那の手をにぎった。
「ああ…」
東子の目の前に光の世界が現れた。
「大地が輝いている…」
「光の渦が見える…」
東子の瞳から涙が流れていた。
心の奥で生命が輝いている。
「あっ…」
東子の中で何かが弾けた。
紗那への溢れる想いがその扉を開いた。
その扉から光が飛び込んでくる。
無数の光の粒が舞っている。
その扉を抜けた。
身体はもうなかった。
自分はただの光の集まりであった。
「これが…私…」
そして、自分を包み込む光。
それは紗那であった。
「紗那…」
自分は今、紗那の中にいる。
紗那に包まれている。
東子はその喜びで満ちていた。
こんな感動は今まで感じた事はない。
どれだけ肌を重ねても、この感動には遠く及ばない。
「東子…」
ゆっくりと混ざり合う光と光。
混じり合い、全てを共にしていく。
「紗那…」
「私の… …」
東子が小さくつぶやいた。
その瞬間…
二つの光が勢いよく回り出した。
止まらない。
その渦を止められない。
「ああ…」
抱き合ったまま混じりあう。
その喜びの波動が広がっていく。
光の粒が集まってくる。
光の粒が一つになった二人に融合していく。
溶けていく。
混じり合い、溶け込んでいく。
「ああ…これって…」
東子はその喜びの中で何かを感じた。
「これが…本当の姿…」
「そうだ…男でも…女でもない…」
紗那が東子に言った。
紗那は分かっていた。
その喜びの中に、東子は真実を見つけた。
「これがそうなら…」
その喜びの渦の中で、東子は自らの未来を見た。
「もう離れる事などない…」
「離れることなど出来ないのだ…」
紗那と東子の想いが一つになった。
二人は今、共に有る。
混じり合いながら二人は今一つであった。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-