「角が生えてる!」
華音はその姿を見て驚いた。
「一応、鬼だからのう」
嵐が皮肉っぽく言った。

「鬼って本当にいるんだ…」
華音は目を丸くして驚いている。
「俺の時はそんなに驚かなかったではないか?」
「どう見ても犬だもん」
華音は嵐を神だと思っていない。
「犬ではない神だ!」
嵐が念を押すが華音には通用しない。
「前鬼、後鬼、ひとつ頼みがある」
「何なりと…」
「出雲に行ってくれ!見てきて欲しいものがある」
真魚は前鬼と後鬼に何かの確認をさせようとしている。
「それで、何を見てくれば…」
「それは後で話す」
華音には話せない。
事実が華音を傷つける場合もある。
「この子は白髪のようですな」
前鬼がその病に気づいた。
「昔、白髪の皇子という皇子がいた」
「同じ病じゃな…」
後鬼も知っているらしい。
「だが、既に神に選ばれたようだ」
前鬼が笑って華音を見た。
「分かるの?」
「会ったばかりなのに…」
華音は不思議さを隠せない。
「お主らの羽音、華音にばれておったぞ!」
嵐が冷やかす。
「何と、ばれておったのか!」
後鬼が驚いている。
「それほどということだ」
真魚が言った。
「なるほど…」
前鬼が腕を組んだ。
何かを考えている。
「媼さん、儂らは急がねばならんな」
「そのようですな」
前鬼と後鬼の考えは同じであった。
前鬼と後鬼は真魚に話を聞くと、出雲に飛んだ。
「おじさんは鬼と友達なんだ」
華音は驚くと言うよりはおもしろがっている。
「私は友達いないから…」
「もういるではないか」
嵐が華音に言った。
「もう友達だ」
嵐の言葉に華音が笑みを浮かべた。
「ありがとう!嵐」
思わず嵐を抱きしめた。
「初めての友達よ!」
華音はうれしかった。
それは伝わる波動で分かる。
華音の心がほぐれていくのがわかる。
嵐もうれしかった。
「ところで華音…」
「笛は誰に習ったのだ?」
真魚が華音に話を切り出した。
「母よ、全部母から教わったの」
華音が答える。
「すると華音の母も笛が吹けたのだな」
「そうよ」
「なるほど…それならば…」
その答えが真魚に道を拓く。
「俺らは行かないのか?」
嵐が真魚に聞く。
「今はな…」
「それは、いずれ行くということか?」
「そうだ」
真魚は何かを掴んだようだ。
「全ては奴らが帰って来てからの話だ」
真魚はそう決めていた。
海からの風が吹き上げてくる。
頬を優しく撫でる。
夕日が沈もうとしていた。
華音の母の墓がある丘の上にいた。
「この島と出雲の間に、沈むのだな」
真魚が夕日を見てそう言った。
華音の母は、ここからからこれを見ていたのだ。
海に消えていく夕日が切なく感じる。
華音の笛が聞こえていた。
海に向かって笛を吹いている。
その旋律の中に母の想いが込められている。
言えなかった言葉。
伝えたかった想い。
それが何だったのかはわからない。
だが、華音の中でそれは生きている。
笛の音が風に乗って飛んでいく。
その波動が次元の幕の上を伝わっていく。
「何だか切ないな…」
嵐は笛を吹く華音を見ている。
「悲しみが詰まっている…」
そうつぶやいた。
「だが、美しい…」
別の一面も併せ持つ。
「仕組みがそうしているのだ」
真魚が華音を見て言う。
「どういうことだ?」
嵐にはその意味が分からなかった。
「哀しい生き方だ」
真魚が言った。
「ありのままでよい、人はそういうものだ」
「だが、世の中の仕組みがそれを許さない」
華音が一人にならざるを得なかった事実。
「お主には見えているのだな」
嵐は真魚の言葉をそう受け取った。
「華音がここにいる理由が…」
そして、そう感じた。
「一握りの者達が生きる為に、多くの者が犠牲になっている」
「その仕組みを組み込んだ者がいる」
「そして、力で従わせる」
真魚はその男が誰か知っている。
「なにもないことは、本当は自由なのにな…」
嵐のなにげない言葉。
「それは青嵐の言葉か?」
真魚がからかう。
「あの男に言ってやれ…」
真魚が笑ってそう言った。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-