何度目かの診察の時S先生は僕の実兄の同席の前でこう言った。
「河原さんは近々退院してもらいます。
退院するにあたって注意事項があります。
まず、自分の力でアパートを探し、自分の力で仕事を見つけ、自分ひとりの力で生きていって下さい。
但し、2~3か月は実家で暮らして下さい。
その後は全て自分の力で生きて行ってください。
あなたは病気ではありません、必ずそうしてください。」
退院の日が決まり兄と母が迎えに来てくれた。
僕の実家である園部に着いた。
ところが、ところがである、退院した当日に前もってしらされないまま兄嫁がこう言った。
「今日から天神さんの前のアパートに住んでもらいます。すき焼きの用意がしてあるので、そのアパートで家族で話し合いして!!」
僕の父と母と兄と僕とでそのすき焼きパーテイーが始まった。
「なあー成治、解ってくれ!、お前は一度あの家を出た人間や、一生あの家で暮らすことは出来ん、おまえ一人でこのアパートで生活してくれ!
あの家には兄ちゃんの娘もいる、そこのところ解ってくれ!!」
と、母が言った。
兄はとてもやさしい人間である。
血液型も僕と一緒でB型である。
兄の気持ちも良く解る。
母の気持ちも良く解る。
父の気持ちも良く解る。
兄嫁の気持ちも良く解る。
でも、僕は納得しなかった。