入院を余儀なくされた
わがお散歩仲間兼
子羊授乳作業
指導員の毒舌夫人。
色々あって入院当日
病院に付き添ったのは私で、
もうその日の奥様は
本当に弱々しくて
いらっしゃってさあ!
麻酔と治療でぐったりとしつつ
お腹に力の入っていない声で
「私はもうね・・・
こんな怪我をした
自分自身に腹が立って・・・!」
その翌日だったか
翌々日だったかに
毒舌夫人の長年の友である
牧場主奥様と病室を訪ねた時も
「本当だったらもう今日には
立って廊下を歩いて
いなくちゃいけないのに
まだベッドから降りちゃ駄目なの、
手術の後の麻酔が
間違っていたらしくて
痛みがまだ取れないの、
今日から薬が変わったんで
効くといいんだけど、
リハビリが遅れるのが不安で・・・」
その数日後に今度は
わが夫(英国人)と
お見舞いに行ったら
毒舌夫人は
ベッド横の椅子に座っていて
でも声はガサガサ、咳も出ていて
「立って椅子に移動できる
ようにはなったんだけど
この咳がどうやら肺炎らしくて
その検査もするんですって・・・
ゴホゴホゴホゴホ」
しかし間のいいことに私は
毒舌夫人のお好きな喉飴を
お見舞いの品に持参していたので
「よろしければどうぞ」
「やだ嘘嬉しい!
この飴が欲しかったのよ!」
で、30分くらい病室にお邪魔して
そろそろ帰ります、となった時に
「ねえ帰る前にお願いしていい?」
「何でもどうぞ」
「ベッドの上のそれ捨てて。
あとこのジュースもね、もう
賞味期限過ぎちゃったから
中身をそこの洗面台にあけて
ゴミ箱にポイして。それから
窓際に並んでいるお見舞いの品ね、
整頓してもらえる?
ゴチャゴチャしているのを見ると
イライラするから、あ、それで
そこのチョコレートビスケットね、
お見舞いでもらったんだけど
私好きじゃないからアナタ
持って帰って家で食べて頂戴」
・・・ああ、
これは治り始めたな、と。
それでまたその数日後に
病室に今度は単身で行くと
奥様の第一声が
「ちょっとアナタどうして
もう少し早く来れないのよ」
「順調なご回復何よりです」
それでまあ前回と同じように
病室の整理整頓など手伝って
「じゃあそろそろ帰りますね」
「・・・実はもう一つ
お願いしたいことがあるんだけど・・・
でも流石に図々しいかしら・・・」
「どうしたんです、何ですか」
「・・・洗濯物が
溜まっていて・・・
手持ちの着替えの数が
心もとなくて・・・
牧場主奥さんが近いうちに
着替えを持って来てくれることには
なっているんだけど、ほら、
彼女をせかすのは悪いから・・・」
「洗えばいいんですね、
普通洗いで大丈夫ですか?」
「全部まとめて30度で
洗ってくれて大丈夫よ」
「じゃあ私でもできますよ、
どこにあるんですか?」
「そこの戸棚とカバンの中と・・・
まだ着ていないものもあるから
選別しないといけないんだけど
・・・手伝ってもらえる?
ごめんなさいね、こんな
何もできない状態で
本当に不甲斐ないわ・・・」
「何をおっしゃるんです、
お手伝いしますよ!」
で、お手伝いしたんですけど。
毒舌夫人の指示に従って
『汚れもの』と『これから着る服』を
仕分けるだけかと思ったら
さらに第三の『病室では着ないから
持って帰って欲しい服』という
カテゴリーもあって
それはまあいいんですけど
奥様の言い草が
「これお見舞いで
いただいたんだけど
こんな派手な水辺用ガウンを
どうして私が着るとか
思ったのかしらね?」
「こんなイモ臭いスウェットパンツ
私が着るわけないじゃない」
「私のカバンの中がどうして
こんなにグチャグチャなの?」
それでこの『着ないから
持って帰って欲しい服』は
「私の自宅に置いておいて
うっかりそれが
この服を病室に持って来てくれた
人の目に留まったら
申し訳ないじゃない?だから・・・」
「奥様が退院するまで
私のほうで預かればいいんですね」
「話が早くて助かるわ」
「じゃあこっちが『汚れもの』ですね、
洗って乾かして持ってきますから」
「・・・ねえ、畳んで」
「はい、畳んで持って来ますよ」
「そうじゃなくて・・・
アナタ今袋の中に私の服を
乱雑に詰めようとしているでしょ、
私そういうの見るの嫌なの、
全部畳んで持って帰ってくれない?」
「・・・奥様?これは汚れもの、
これから洗濯機に乱雑に突っ込まれる
運命を持った洋服の山ですよ?」
「そうだけど!わかるけど!
私も変なことを言っている
自覚はあるのよ、でも私は
自分の服が丸まっているのを見ると
いたたまれない気持ちになるの、
怪我で気が弱っているのかしら、
だから申し訳ないけど・・・
(上目づかいの可愛い顔)」
「(ぐるぐるに丸めた汚れ物を
乱暴にビニール袋に詰めながら)
ハーイ、ではクリーニング
承りましたー、お返し時には
アイロンをかけて
畳んでお渡ししまーす」
「・・・アナタ、私の
入院初日はもうちょっと
優しかったと思うんだけど」
そんなわけで奥様は
もうほとんど
治っていると思うんですよね。
よかったよかった、
なのでございます。
奥様の順調な回復と
早期の退院を願っての
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