朝の子羊への授乳手伝い。

 

 

負傷退場なさった

毒舌夫人の穴を埋めるべく

奮闘しているわけですが、

現在人工授乳を

必要としている子羊は25頭、

各自に1本ずつ哺乳瓶を与え

全員が食事を終えたところで

余ったミルクを

『おかわり』としてまだお腹が

膨れていない様子の子に与える。

 

『お腹が膨れていない』は

文字通りの意味で、

十分な量の

ミルクを飲んだ子羊は

背中側から見ると

お腹部分がぽこんと

横に張り出している。

 

子羊がもっと小さい頃は

この『ぽこん』が

空気だったりすることもあり

(つまりミルクと一緒に

空気も飲んでしまっていて

それは子羊の身体に悪い)

注意が必要とのことですが

今私が世話をしている子羊は

全員がもう哺乳瓶から

ミルクを飲むのに慣れていて

その点心配する必要は

あまりないとのこと。

 

そんなわけでまだお腹に

余裕のありそうな子を見定めて

おかわりミルクを与えていると

それに気づいた他の子羊が

「僕もおかわりー!」と

寄って来てもう邪魔で邪魔で

滅茶苦茶可愛くて困っちゃう

(本音が隠し切れなくてすみません)。

 

さてそしてここに1頭

他の子羊よりも

一回り身体の小さい

毛色が少し

灰色がかった子がおりまして。

 

この子のおかわり要求が

妙に自信に満ちているというか

他の子羊たちが必死になって

「おばさーん!給食のおばさーん!

おかわりくださーい!」と

全力で声を上げ突撃してくる一方

この灰色のおチビちゃんは

「僕はおかわりを貰えるよね、

僕、知っているからね、で、

僕のおかわりミルクはどこ?」

 

・・・これはさては、と

入院中の毒舌夫人を

問いただしましたら

「あの子は私のお気に入りでね、

はい、認めます、私は

毎回あの子に予備の

ミルクを与えていました」

 

そういう贔屓

許されるんですかっ?

 

私は給食のおばさんとして

そこらへんは公平であろうと

先入観なく毎朝ミルクを

必要としていそうな子に

せっせと予備の哺乳瓶を

差し出していたのですが?

 

でもまあこういうのは

どうしても個人の趣味というか

哲学みたいなものが

にじみ出るのかもしれません、

私もまずお腹のふくらみが小さい子に

おかわりをあげるじゃないですか、

それで次に身体の小さな子に

「早くもっと大きくおなり」と

予備ミルクを与えていたのですが

ある時ふと自分の幼少期を思い出し、

つまり私は身体の

大きい子だったんですが

大きく育つ子供って基本的に

常にお腹を空かしている

傾向が強いと思うんですよ。

 

例外は勿論あるんですけど。

 

わが弟(割と背が高い)が

20代をなかばも過ぎた頃でしょうか、

ある日突然真面目な顔で

「お姉ちゃんて

『お腹いっぱい』って感覚、

いつ理解した?俺はさ、それ、

子供の頃は全然わからなかった、

どれだけ食べても

常にお腹が減っていた」

 

・・・その気持ち!

 

わかります!

 

というわけで最近は

身体の大きい子羊にも

ちゃんとおかわりを与えていて・・・

 

だから結局すべての担当子羊に

おかわりをあげているような・・・

 

ともあれ灰色チビスケちゃんは

私の思惑などおかまいなしに

「僕はおかわりが

もらえるはずだもんね、

だっていつも貰っていたもんね、

ねえいつもの僕に特別優しい

給食のおばさんはどこ?

あの人なら絶対に

おかわりをくれるよ?」

 

・・・毒舌夫人に成り代わり

この子のことをさりげなく

贔屓してあげている私です。

 

中立性を保てずすみません。

 

 

『お腹がいっぱい、という

感覚がわからない』が

わかるあなたも

わからぬアナタも

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