瑠香です
前回のブログの追記というか、もう一つ書いておきたいなと思ったことがあったので。(追記のわりにはまた長いです)
そのことについて書きとどめておこうと思います。
今回は、鎌倉地味巡りをするキッカケとなった毘沙門天のことです。
前回のブログはこちらより↓
鎌倉地味巡りメンバーのうち、わたし以外の3人は鎌倉の前に浅草に行っていて。
その時に導かれるように巡った金龍山浅草寺、毘沙門天、歓喜天、(大根、巾着…)の対になるのが鎌倉の宝戒寺のように感じたとのこと。
たしかに宝戒寺にはその3つのワード(大根、巾着もね
)全てが揃っています。

ちょうどその頃、わたしは出雲口伝に絶賛沼り中でした。
出雲のサイノカミ信仰は、クナト大神、后神の幸姫(さいひめ)命、息子のサルタ彦大神の三神を祀るものです。
そのサイノカミを、移り変わる時代の流れから守るために、役小角が三宝荒神に変えて祀ったと出雲口伝では伝えています。
そんな三宝荒神のことを掘り下げていた時に、ふと目に止まった仏尊がおりました。
サイノカミ信仰になんとなく雰囲気が似ているような気がしたのです。
それが、
毘沙門天と妻の吉祥天、その子供の善膩師(ぜんにし)童子 を祀る毘沙門天三尊でした。

THE・毘沙門天ファミリー!!
仏教には数多くの仏様がおられますが、その中でも家族神というのは珍しいそうです。
毘沙門天と吉祥天の子供は善膩師童子だけでなく、本当は5人です。
そのうち善膩師童子は末っ子なのだそう。
末子が三尊の中に入れられているなんて。
末子相続だった出雲を思い起こさずにはいられません。
実は毘沙門天ファミリーには、まだ続きがあります。
妻である吉祥天には両親がいる上に妹までいるのです。
父 徳叉迦竜王
母 鬼子母神
妹 黒闇天
父の徳叉迦竜王は毘沙門天の部下にあたりますが、八大龍王の1人です。
母の鬼子母神は有名なので説明は省きますが、名前にもあるように鬼(夜叉)なのです。
つまり、
吉祥天は龍と鬼の娘なのです。
龍と言えば龍蛇信仰を持つ出雲族だし、鬼と言えばやはり、各地に離散し「鬼」や「土蜘蛛」などと呼ばれた出雲族を彷彿とさせます。
※鬼や土蜘蛛の由来は諸説ありますし、個人的には土蜘蛛の由来が九十九 (ツクモ)、筑紫だという説も気になっています。祀ろわぬ者たちの総称だと思っているので出雲族だけのことではないだろうとも思いますが、今回は敢えて出雲族に注目をしています。
妹の黒闇天のことにも触れておこうと思います。
吉祥天はヒンドゥー教(バラモン教)の女神ラクシュミーが起源です。
ラクシュミーは富や美を司る美しい幸運の女神ですが、やはり妹がいます。
それがアラクシュミー。不幸と貧困の醜い容姿の女神です。
アは英語のAnに相当し、ラクシュミーという言葉自体が幸運を意味するので、ラクシュミーの否定形でアラクシュミー=不幸、不運ってことになるんですね。
このアラクシュミーが黒闇天。
ラクシュミーとは真逆の性質を持つ妹ですが、二人は常に一緒にいて寄り添うような存在だそうです。
これは幸運と不運は表裏一体ということを意味しているんだとか。
まさに陰陽の関係。
日本神話でいうコノハナサクヤヒメとイワナガヒメの関係性にも似ていますね。
そんな黒闇天さん、東京の牛天神北野神社に祀られています。
(こちらでは暗黒天女というお名前なのと、弁財天の姉ということになっています)
さて、吉祥天や黒闇天の起源がインドにあるように、夫の毘沙門天も元々はヒンドゥー教(バラモン教)の神様でした。
毘沙門天のインドでのお名前はクベーラ。
富や財宝を守護する神様だそうです。地下の財宝を護る神ともされています。
で、日本では毘沙門天と吉祥天は夫婦なわけですが、インドでは、ラクシュミーの夫はクベーラではなく、ヴィシュヌです。
ヴィシュヌはブラフマー、シヴァとともにトリムルティとして世界を維持する重要な神様です。
日本神話で言うところの造化三神のような位置づけですね。
そんなわけで、インドではラクシュミーとクベーラは夫婦ではないのです。
つまり、毘沙門天一家の家族神はオリジナル設定なんですよね。

毘沙門天信仰の総本山である信貴山朝護孫子寺でも家族で祀られています。
そして、役小角が出雲のサイノカミ信仰が消滅するのを避けるため、密かに姿形を変えて新たな信仰として成立させた三宝荒神。
実は朝護孫子寺と兵庫の清荒神には深い繋がりがあると言われます。
もしかして、毘沙門天三尊もサイノカミが姿を変えた形の一つなのでは?
などと、想像を膨らませてしまいます。
そうそう、毘沙門天と言えば!
鞍馬寺を忘れちゃいけませんね!
鞍馬寺の信仰もかなり独特ですが。
毘沙門天、十一面観音、護法魔王尊の尊天という三尊で構成されています。
ここでも3
しかも、護法魔王尊のお姿が天狗なんですよね👺
サイノカミの三神の一人、サルタ彦大神も鼻の長い天狗の姿で描かれることが多いです。
ここにもサイノカミの気配が…。
サイノカミにしても三宝荒神にしても尊天にしても、造化三神にしても。それからヒンドゥー教のトリムルティにしても。
3という数字をかなり強調してきますね。
思うに、3というのは宇宙を構成するエネルギーの現れです。
それぞれのエネルギーがいちばんバランスよく活かされ、宇宙の拡大と収縮の均衡を保つことができるのが3なのです。
保つことができるというより、そのような宇宙の営みを表現したのが3という数字。
北条氏ミツウロコも3、天台宗の三諦星も3

葵の御紋も3

夫であるクナト、妻の幸姫、子供のサルタ彦という3人の家族神であるサイノカミは、家族という最小規模の宇宙のことなのかもしれない。
家族の平和が村の平和へ、国の安寧へと繋がっていく。

出雲口伝では、賀茂川付近に住んでいた出雲族は鞍馬山の麓に移り住んだとも言われています。
鞍馬寺の麓の由岐神社の境内には三宝荒神も祀られています。

サイノカミは通常、塞の神や才の神と書きますが、出雲口伝では幸の神と表現されています。
幸姫(さいひめ)の幸ですね。
村境や辻などで外からの厄災を防ぐ境神として、今では道祖神などの姿で見かけることもありますが、信仰としてはほとんど消えてしまったように思います。
ですが、本当はわたしたちの知らないところでサイノカミは生き続けてるのかもしれませんね。