先日、マンション投資の営業電話がかかってきました。
昨年、賃貸フェアで名刺交換をした不動産会社からの連絡です。東証プライム上場の、いわゆる大手企業でした。

今回、少し驚いたのはそのセールストークです。

「大阪環状線・京橋駅すぐの好立地に、当社がワンルームマンションを開発しました。
この物件、月々わずか1万円程度の手出しで保有できます。」

従来であれば「利回り◯%」という説明が一般的です。
しかし今回は「手出し1万円」という、全く別の切り口でした。


話を聞くと、仕組みはシンプルです。
投資ローンの返済額と家賃収入の差額が、月々約1万円に収まるというもの。

つまり、最初から赤字前提の投資です。

ここに違和感を覚え、いくつか質問をしました。

・初期費用は含まれているのか
・固定資産税や都市計画税は考慮されているのか
・ローン金利は何%想定か(変動か固定か)
・入退去時のコストや改装費は織り込まれているのか

すると担当者は、固定資産税について
「お客様の属性によりますので」と回答しました。

固定資産税は人ではなく、不動産に対して課税されるものです。
その点を指摘すると、担当者は一旦保留に。

その後、「上席」と名乗る方に電話が代わりました。

改めて確認すると、
「月々1万円の手出し」という説明には

・税金
・空室や入退去コスト
・修繕、改装費
・金利変動リスク

これらは一切含まれていないとのことでした。

つまり、見えている数字は“表面上の収支”に過ぎません。

私が
「これは賃料収支ではなく、値上がり(キャピタルゲイン)前提の投資ですね」
と確認すると、

「その理解で問題ありません」

との回答でした。


なお、今回の件について、特定の会社を批判する意図はありません。
むしろ、このような販売手法が出てくること自体が、今の市況をよく表していると感じています。

本来、不動産投資は賃料収入で成立するものです。
それが成立せず、値上がり前提で組み立てられている点に、ひとつの歪みが見えます。


この状況は、

・地価が上がりすぎているのか
・家賃が相対的に安すぎるのか

いずれか、もしくは両方です。

どちらにせよ、
賃料で成立しない不動産投資が一般化する状態は、健全とは言いにくいでしょう。


こうした歪みは、長くは続きません。

・地価の下落
あるいは
・家賃の上昇

といった形で、いずれ市場によって修正されるはずです。

この話を師匠にすると、
「相場も来るところまで来ている。ピークが近いな」
と一言。

私が
「“月々1万円で持てる”という切り口は、マーケティングとしては非常に優秀ですね」
と伝えると、
「君らしい視点だな」と笑っていました。


歪みが発生しているという視点は、分かる人には分かるものだと思います。

ただ、このような歪みは市場が大きく変化する前触れであることが多く、
問題は“どの方向に修正されるか”です。

上に行くのか、下に行くのか——それは誰にも分かりません。

だからこそ投資において重要なのは、未来を当てることではなく、
「どこにポジションを置くか」という意思決定です。

私は少なくとも、現時点は賃料収入を目的とした投資のタイミングではないと考えています。

一方で、キャピタルゲインを狙う投資であれば成立する余地はありますが、
その場合は立地の選定をより厳しく行う必要があります。

加えて、「いつ売るか」という出口戦略まで含めて考えなければ、
投資として成立させるのは難しい局面ではないでしょうか。

言い換えれば、「誰でもできる投資」ではなく、
前提条件を見誤ると成立しない投資に変わりつつあるとも言えます。