茶碗をみて感動して泣けるという、
めったない体験をしてきました(笑)
この春、国宝の三つ、世界に三つしかない曜変天目茶碗が、
東京と関西で同時にお披露目されるという気の利いた企画が、
美術展示の世界でありました。
滅多なことで所蔵する施設から外へ出されることがないというお箱入りの宝物たち。
気がつけば、三館ともに足が向いておりました。
物好きですね。
私にとって、美意識を磨くことは、
勤勉と同等かそれ以上に尊い行為として位置づけられているようです。
だんだん自覚ができてきました。
それがとてつもないエネルギー源になっているみたい。
最近の私、晴れ晴れと元気♪
こんなことなら、美術館行きまくるわ♪
そして感想書きまくるわ。(←極めて皆さんの反応が薄いけれど)
一つ目の茶碗との再会のことは、この前書きました。
いや、本当に大袈裟でなく、
あの茶碗はどうしてるんだろう、
あの感動をもう一度確認したいって、
思い出すことがありました。
最初の出会いについてはここに書きました。
その茶碗がこちら。京都大徳寺で大切にかくまわれているそうです。
約30年前、東京国立博物館で『国宝展』というのがあって、
そこで出会いました。
国宝のみが一挙200展も出揃う企画、
生きてるうちに今しかないと20歳の私、思い立ちました。
それだけのためにわざわざ東京へ行くの?と呆れる母を尻目に、
ものすごい使命感に駆られての初一人旅でした。
三つ子の魂百まで、ですね。
始発のバスに乗り、
新幹線では名古屋まで立ちづめ、
到着したら入場の行列が1時間。
押し合いへし合い、
閉館時刻まで飲まず食わず、
持久力勝負の観覧でした。
それでも、
至極の日本美に触れ、
心は静寂で、深く深く感動した記憶があります。
その時、大阪藤田美術館所蔵のものも並んで展示されていました。
今回の大触れ込みから思えば、画期的に贅沢な目録だったわけですね。
こちらは先日、奈良国立博物館で再会いたしました。
藤田が改修工事中だからこそ貸し出されたようで、
こちらも滅多に館外へ持ち出されないそうです。
どちらの茶碗も、最初に出会った時の方が素敵に見えました。
その理由は光のようです。
結論、LED照明で展示しちゃダメです。
そのことに気づいたのは、
東京静嘉堂文庫美術館では、ガラス張りのテラスで
自然光だけで展示されているのを見たから。
刻一刻と傾いてゆく陽射しに合わせ、
茶碗の色も煌めきも移り変わっていくのを鑑賞することができました。
この美術館では、行列に並べば、何度でも茶碗に会うことができたのです。
時間と人数を制限しながら開放してくれるので、
好きな角度から好きなだけ眺められる。
本来、美術鑑賞とはこうあるべきだと私は強く信じている。
「歩きながらのご鑑賞」なんて、ふざけんじゃねー!
到着した2時ごろから、閉館の4時半まで、何度となくその前を訪れました。
西に傾いた日差しが直接茶碗に当たり始めると、
今まで蒼色だった茶碗が、漆黒の深い深い輝きに変わった!
斑文も光の闇に飲み込まれてしまって、真っ黒な茶碗に。
蒼色でも漆黒でも、夜空色に変わりがないところも不思議。
自然光で鑑賞すると、
隅々まで完璧に均整のとれた姿を、細部まで見て取ることができました。
これが釜から出てきた時の陶工の気持ちを想い、
このために掛けたその人の精神力を想像すると、
とてつもないエネルギーが感じられてきて心が震えました。
私も陶芸やってたからほんの少しは想像がつく。
そしてね、閉館直前には、
「よく観ていったらいいぞょ。」
と、またまた目の前から誰もいなくなった。
茶碗しゃべった!
美術館の展示センスと作品そのものの素晴らしさと、
それからまた美術の神様から大サービスをいただき、
放心状態で美術館を去ったのでした。
静嘉堂文庫美術館は三菱の創業者によるコレクション。
そのお屋敷跡が美術館になっているのかな、
東京とは思えない緑豊かな高台に広い敷地とともにありました。
静嘉堂文庫にしても、藤田にしても、その所蔵品は、
日本の古美術品が海外に散逸しないようにと個人が蒐集した品々。
そのコレクションをみると、審美眼はもとより、
その人が何を心の拠り所としていたのかが窺えます。
それって、日本の心、魂のような気がした。
より良質な芸術品は、公設の美術館、博物館でなく、
私設美術館にひっそり身を寄せているものも多いのかも。
恋い焦がれた大徳寺天目茶碗との30年ぶりの再会が、
心の中で輝いていた思い出とは色褪せて見えたのがショックでした。
もしかして、私の感性鈍ってしまったのだろうかと、
相当焦ったのですね。
それが、三碗全てに会いに行く動機になったのですが、
理由がわかってよかったです。
昔の東京国立博物館は窓があったような。
蛍光灯の他に自然光も入ってきてたんだろうな。
(美術館は展示にはもっと気を配ればいいのに…。ほんまにプロか?)
そのおかげで、日本の素晴らしい美術品にもたくさん出会えて、
魚、水を得るには何処に行けば良いのか悟ることができました。
日本の古美術品を愛でる展覧会、実は東京でもう一つ行きました。
またいつか、しつこく綴ろうっと。
写真はそれぞれの美術館のHPからお借りしました。
奈良公園で鹿さんにも会ってきた





