イベント会場で視線を上げていただくと、
剥き出しの梁と根太(天井板を支えている角柱)が縦横に走っています。
漆喰の白壁に、
えび茶色のベンガラと柿渋で塗装した材木。
インテリアの主役としていい感じに仕上がっているようで、
お越しくださった方に喜んでもらったり、褒めもらったりしています。
カフェオープンにあたり、気になっていた梁の上に溜まった埃を一掃するため、
180cmの脚立を買ってきました。
久しぶりに脚立の上から眺める光景。
どの角度に目をやっても、懐かしい。
そして、
『いい仕事してるやん♪』とひとりで満足。
実は、この塗装は私のオシゴトです。
家中、庭中、剥き出している木肌に施した塗装はすべて私の担当でした。
「大丈夫、誰にでもできますよ〜。」
と、工務店の人に投げられて…。
ベンガラは、酸化鉄を主成分とする顔料。
たしか、7色ほど黄〜赤〜茶と色のバリエーションがありました。
柿渋は、柿の果汁を発酵させたもの。たしか、ツーンと臭かった…。
含まれるタンニンが重合して皮膜を作るので、木材の防腐・保護に適しています。
ベンガラは柿渋に分散して、刷毛で塗布します。
柿渋の凝固が進むので、その日使う分量だけを調製します。
リビングはえび茶と柿渋の重ね塗り
廊下はえび茶のベンガラのみ
隣室は柿渋のみ
庭は朱色のベンガラ
と、少しずつ違った色に塗り分けました。
京都のはずれ南山城の柿渋メーカーまで塗装について教えてもらいに行きました。
社長さんから、天然素材がいかに人に優しいかお話を伺いました。
ハウスシック症から園芸の堆肥にまで話が広がったこと、
今でもふと思い出します。
退出した時には、初夏の日がとっぷり暮れて、
十津川の水面がぼおっと美しく発光していたことを覚えています。
塗装は、まず梁に厚くびっしりとついた囲炉裏の煤を落とす作業から始まりました。
母が亡くなって、目的のない時間に溢れていたので、
一心に取り組むことができました。
脚立の上で梁を見上げ続ける作業は、大変でした。
目に焼き付いた映像なわけです。
思えば、この梁には8年前の私の思い出が詰まっています。
私は、この剥き出しの梁のデザインにはまったく気乗りしませんでした。
『この先、梁の上に溜まった埃は誰が拭いてくれるんだろう?』っと思ったから。
結局、再び自分が脚立の上に立つことになりました。
最上段で作業するときは、体勢によっては脚が震えることも…。
でも、またこうして脚立に上れたこと、嬉しくもあります。
『その気になれば、なんでもできる。』
と、思えたから。
ソファーに寝そべって見上げてみると、今ではそう悪くもない意匠に思えてきました。



