コミュニケーションもドルコスト平均法。
~投資が教えてくれた、人間関係の積み立て方~
前編では、「言わなくても分かってくれるはず」という期待が、すれ違いを生むことを書きました。
実は、そのことを考えていた時、ある投資手法とよく似ていることに気づきました。
ドルコスト平均法です。
今ではNISAの普及もあり、この言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
ドルコスト平均法とは、株価が上がっても下がっても気にせず、毎月決まった金額を淡々と積み立てていく投資方法です。
この投資法の一番大きな特徴は、感情を挟まないことです。
株価が上がったから慌てて買う。
暴落したから怖くなって売る。
そうではなく、ルールを決めて、淡々と続ける。
だから長い目で見ると、大きな失敗を避けやすいと言われています。
私は、この考え方は人間関係にも当てはまるのではないかと思っています。
人は、小さな不満を我慢します。
「これくらいなら。」
「まあ、いいか。」
そうやって積み重ね、本当に限界になった時、初めて感情を爆発させます。
でも、その時には言葉も強くなります。
言われた相手からすれば、
「そんなに不満があったの?」
と突然の出来事です。
驚きますし、防御反応も出ます。
そこで話し合いになるのではなく、言い訳になったり、反論になったりしてしまう。
これでは、お互い苦しくなるだけです。
だから私は、感情が爆発する前に、小さく伝えることが大切だと思っています。
「今日はちょっとしんどい。」
「ご飯お願い。」
「悪いんだけど、帰りにヨーグルトかプリンを買ってきてもらえる?」
そこまで伝えれば、相手は迷いません。
逆に、
「今日は外で食べてきて。」
だけ伝えると、相手はその通りにします。
でも、自分は食べるものがなくて、
「普通、何か買ってくるでしょ。」
と期待してしまう。
それもまた、「言わなくても分かってくれるはず」という期待です。
だったら、最初から伝えてしまったほうがいい。
そのほうがお互いに気持ちがいいと思うのです。
もう一つ、もったいないと思う場面があります。
「手伝おうか?」
そう声を掛けられた時、
「今さら何?」
「普段は何もしないくせに。」
そんな言葉を返してしまうことがあります。
もちろん、それまでに積もった不満はあるのでしょう。
でも、その一言で、せっかく勇気を出して差し伸べた手を、自分で振り払ってしまうこともあります。
一度断られた人は、
「どうせ何を言っても怒られる。」
と思えば、次からは声を掛けなくなります。
そして、
「やっぱり何もしてくれない。」
という負の連鎖だけが残ってしまう。
これは夫婦だけではありません。
親子でも。
友人でも。
職場でも。
陰で愚痴を言って共感してもらえば、その場では少し楽になります。
でも、本人には何も伝わりません。
問題も解決しません。
むしろ、
「あの人はこういう人だ。」
というレッテルだけが積み重なっていきます。
だったら、小さな違和感のうちに、小さく話す。
これもまた、コミュニケーションの積み立てです。
投資では、感情で売買しないことが大切だと言われます。
ドルコスト平均法は、その代表的な考え方です。
私は、人間関係も同じではないかと思っています。
不満を限界まで積み立てて、一度に爆発させるのではなく、
「今日はしんどい。」
「ありがとう。」
「助かった。」
「次はこうしてくれるとうれしい。」
そんな小さなコミュニケーションを積み立てていく。
感情でコミュニケーションをするのではなく、コミュニケーションを積み立てる。
それが、私の考える「コミュニケーションのドルコスト平均法」です。
もちろん、この考え方が正解だとは思っていません。
私自身、何度も失敗し、相手を傷つけ、その繰り返しの中で、ようやくたどり着いた一つの考え方です。
人は、自分で経験しないと、本当の意味では分からないことがたくさんあります。
親に言われても分からなかったことが、自分が同じ立場になって初めて分かるように。
だから、このブログを読んでも、
「そんな考え方もあるんだ。」
そう思っていただけたら、それで十分です。
もし、この私の失敗談が、いつか誰かの人生で思い出されることがあれば。
そして、その時に少しでも役に立つことがあれば。
それだけで、私は十分うれしく思います。