「父」と同じだ……!
…真っ先に私の頭に浮かんだ言葉。
父も自分が気に入らなくなると「直ぐ」大声で恫喝したりモノを投げたりする事が「普通」の人だったから。
ただ、「モト」が違ったのは
「モノには当たるが、壊さない」
…正確に言うと
「当たって、壊れるようなモノには当たらない」
…もっと言えば
「壊れたモノでも、取って置く」
…だって、
「直せば使える」
「これは高かった」
「これはとても価値がある」
…というような『正当な理由』が山ほどあったのだから。
さて、不愉快ながらも「言い返す」すべを知らなかった私はそのまま黙って支度を続けた。
考えてみれば「モト」にだってやるべき事は山程あった訳なのだけど、
『元祖・他力本願』
…「誰かが助けてくれる」ということは「自分がやりたくない事を丸投げ出来る」と同意、という人にとっては、自分にとっての「いつもの朝」と同じ朝が過ごせない、という事が耐えられなかったのだろう。
やって来た「上司御夫婦」はほぼ同年代、とてもテキパキした人達で特に旦那=上司さんは「いつも通り」重い荷物を運ぼうとしていた私に向かって
「リオさん! アナタはそんなもの運んじゃ駄目だよっ!」
…と、サッサと私の手から奪って運んでしまうような人だった。
元々荷物が少なかったから普通乗用車で3回も往復した後、4回目には人間が乗って荷物の移動は完了!……という引越。
荷物を全部運び入れ、やれやれ一息……となった時、私がお茶を入れ、御握りとオムレツを出すと奥さんが
「用意してくれたの~? ありがとうね~!
●●!(旦那の名前) リオさんが御握り作ってくれたよ~!」
「わお~っ‼‼ 御握りだ~っ!」
…と、旦那さんも大喜びしてくれた。
すると。
「そうだろ~、リオは皆の為に朝から用意してくれたんだよ!」
…「モト」はそう言って例の「ヘラヘラした笑顔」を私に向けると、二人の前でいきなり私の肩を抱き、撫で回した。
正直に言おう。
ゾッとした。
その顔とその態度は、まさに「アノ母」を思い出させたから。
何の事はない、私は『毒親の家』を飛び出したつもりが、一人で両方の要素を持つ人間と『自分の家』を持つ事になった訳だ。
それも、『毒親の家』では取り敢えず感じなかった、
「日常的なオカネの苦労」
…という項目まで加えて…。