「金曜日」
朝、PCを開けると見慣れない長いメールが入っていた。
発信先は『ポポ』。
彼女個人から直接メールが来たのはそれが初めてだったので、何事かと一番に読み始めた。
概略は以下の通り。
ハ~イ、リオ!
どうしても聞きたい事があるのだけど、良いかしら?
この前の貴女の料理はどれも素晴らしかった、私は貴女と働けるのを楽しみにしているわ!
で、明後日の試食会に私も幾つか料理を持って行きたいと考えているんだけど、貴女はどんなものを持って来るのかしら?
『ナッツ』から前回の品も含めて数種類のドレッシングのレシピを持って来てくれ、とメールが来たのだけど…。
もちろん料理を作ることも、レシピを渡すことも簡単なんだけど……。
あのね、実はどうしてもスッキリしない事なんだけど、何度か問い合わせても彼らは『店』がいつ開店するのか、私の給料が幾らになるのか、私にキチンと答えてくれた事が無いのよ。
私も今回の仕事を出来るのは嬉しいし、お金だけが問題なんて事はないけれども、私だって生活しなきゃならないし、あの『店』で働く事で今の生活を変えたり諦めたりするものもあるのだから、やっぱりそれを上回るだけの「保障」は欲しいでしょう?
だから『料理長』の貴女ならそういう事も何か知っているかと思って…。
…妙な「安堵感」が心に広がるのを止められなかった。
そうか、「やっぱり」同じ事しているんだ……と。
何度も書いているが、「今の私」は給料の金額そのものに然程拘ってはいない。
もちろん「ブラック」は言語道断だが、時給は最低限であっても残業を含め実際に働いた時間の分をキチンと払ってくれる相手であればそれでいい、くらいに考えているから自分の方から給料の希望や時給の交渉などした事は一度も無い。
だから『ナッツ』と『クリ』が「口先」でさえも具体的な金額を一切言わないような状況であってもそれを問い詰めるような事も無かったし、開店時期に関しても……まあ、ソレは長くなるので各自でこれまでの話を御参考下さい…。
そんな私でさえ二人の「イイカゲンさ」、特に『ナッツ』の身勝手さに嫌気を感じ始めていたワケだけれども、逆にまだ殆ど関わって間もないとは言え「開店」が見えて来た中で雇うことにした他の人達には「そういうこと」はキチンと説明しているのだろう、くらいに考えていたのだから。
私はPCに向き直すと『ポポ』への返事を書き始めた…。