当日。
段ボール二箱分にもなった「資料」を買い物カートに詰め込み、私は『職安』のドアをくぐった。
不思議なもので、その日の受付には顔馴染みの職員も、警備員さんも居なかった(職場も「夏休みシーズン」で、交代で長期休暇に入るからこの時期には結構あることなのだけど…)。
受付の職員はそっけなく、警備員さんも同僚との話に夢中、普段のような「一瞬のなごみ」というかふと気が緩むことさえ無かったのは、逆に「神様なりの配慮」だったのだろうか…?
ところでわが町の『職安』では少し前から職員の机の配置が換わり、大きな部屋の一番奥、「隅っこ」という感じだった『ラージ』の席は部屋の真ん中ほどの一番出入りが激しい場所になっていた。 そして、その殆どの来客?用の椅子(ソファ)は真ん中程の空間に集中している。
だから以前は待っている人間からは横目で見れる程度だった(参照;補助申請山アリ谷アリ 7~ 注;『R』=『ラージ』)彼女の姿が、目の前という感じで見れるようになっていた。
当然、私は堂々と「真正面」に座ってしっかり視線を向け、彼女の「観察」を始めた。
『ラージ』だって当然私が来たことに気が付いていた……のは、私の姿に気づいただろう彼女がいきなり「挙動不審」になったことで直ぐ分かった。
私が着いたのは指定時間5分ほど前だったのだけど、私が近づくと『ラージ』は焦った顔で突然立ち上がり、何処かに消えてしまった。
ははあ、誰かに「相談」に行ったかな?しばらく戻って来ないかな……と思ったが10分程で数枚の紙を手に戻ってきて、何やらわざとらしい雰囲気でソレを見つめていた。
私はわざと彼女の方を向かないように、でもしっかり彼女の「影」を視線の中に捉えながら座っていると、彼女がゆっくりと近づいてきた。
「…え、え~と、リオさん、い、イイかしら?」
……いや、イイも何も、今日ココに私を呼んだのはアナタですわよ。それなのに、
「…で、ど、ど、どういう感じかしら~?」
…と、『ラージ』が普段と同じ、全くの「お決まり」の質問をして来たので、私は買い物カートから段ボール箱を取り出し、黙って彼女の机の上にドン!と積み上げた。